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東日本大震災で売上8割減!人生を見直し「結婚相談所」開設

ライフ 投稿日:2017.02.08 12:00FLASH編集部

東日本大震災で売上8割減!人生を見直し「結婚相談所」開設

(写真:AFLO)

 

 数字を求めることだけが人生か。創業した会社を譲渡して、仕事人間が始めた新たな生き方とビジネスとは?

 

 株式会社なごみプロモーションCEO、高須和彦(49)さんの生き方には「みんなで喜ぶ」という、茨城県立取手第二高校野球部員時代に叩き込まれた教えが強く影響している。

 

 高校2年生だった1984年の夏、取手二高は甲子園大会で桑田真澄、清原和博両選手を擁するPL学園を破って優勝した。投手としてベンチ入りはできなかったが、スタンドから仲間を応援し続けた。優勝に導いた名将・木内幸男監督には2年間学んだ。

 

 そんな高須さんの最初の転機は1999年に訪れた。32歳のときに10年間在籍した広告代理店を辞めて独立したのである。会社が「みんなで喜べる」環境ではなくなったことが理由のひとつだった。

 

「辞める前はパチンコ店の広告を取る営業でした。当時はパチンコ業界にはまだこわい感じの人が多かった。仕事も昼夜関係なくすぐやれとか、きつかった。みんな音を上げてしまうのに、要求にすべて対応してきたことで信頼を得ました。

 

 クライアント数は60社ほど。一人で2億円ぐらい売り上げ、粗利は8000万円ほどありました。そのクライアントを抱えての独立ですから、会社との関係は最悪になりました」

 

 会社側は全社を挙げて独立を阻止、潰すと脅してきた。これでは開業してもクライアントに迷惑がかかると判断し、会社側の独立条件をのみ、3600万円を個人の先付手形で2年割賦にして支払ったのである。

 

 厳しかったが、若かったからやれる自信もあった。とにかく数字を上げようと頑張った。新会社はパチンコ業界に特化した広告代理店。チラシなどの制作をおこない、1年で社員はゼロから10人になった。

 

 現在のパチンコ産業の売り上げは23兆円程度だが、当時は30兆円と景気もよかった。労使問題や社員たちの独立など危機もあったが、東日本大震災前には会社の売り上げは30億円に達し、社員も150人を数えた。

 

「東日本大震災が計算外。自粛ムードが日本中を覆い、電力不足でネオンが消され、広告規制が入りました。こんなときにパチンコなんてとんでもないと。

 

 仕事がまったくないので、10日ほど会社を休業にしました。カントリーリスクを考えていなかったのは、経営者として最大のミスでした」

 

 売り上げは一気に8割減。会社の解散も考えたが、役員たちと継続を決め、内部留保を吐き出し、金融機関から3億円を借りて立て直しを図った。70人の社員をリストラ、事務所も銀座から水道橋へ、広さも250坪から100坪にした。

 

 半年後から売り上げは戻りはじめ、20億円まで回復したが、状況が変わった。広告量が減ると同時に価格破壊が進み、どんなに頑張っても1割しか利益が取れなくなった。頭打ちかなと思うようになった。ほかの業種にも手を広げたが、思うようにはいかなかった。こうして2014年、高須さんは第2の転機を迎える。会社を後継者に譲渡することを決心したのである。

 

「雇用者の待遇など、役員たちとの溝を埋められなかった。仕事に対する迷いも出ました。数字だけを追い求め会社と結婚したようなものでしたが、40億、50億円を目指すことが本望なのか? 晩婚でしたが震災の前年に結婚して、いま4歳と2歳になる娘を授かりました。このままでは家族をおろそかにするのではないかという危惧もあり、最後は、オレの人生って仕事だけじゃないよなって……」

 

 創業した会社を離れた高須さんが、最初に始めたのが結婚相談所だ。じつは奥さんとの出会いは結婚相談所の仲介であり、それまでの見合いの経験からシステムがわかっていた。しかし、恋愛が人間にとって普遍的なもので、結婚がみんなに喜ばれることが仕事にしたいちばんの理由だ。すでに東京、川崎、札幌で展開し、国際結婚も成立させ、その推進もおこなっている。

 

 高須さんの現在の目標は、普遍的で景気に左右されない事業を展開することだ。その鍵は「地域社会に根ざすこと」にある。生活とは、地域社会を作ることでもあるのだから。

 

 昨年は生活をトータルサポートする古物買い取り業も始めた。ただ買い取るだけでなく、地域でつながる関係性を持てたらとの思いからだ。同様の趣旨で「財産活用・相続相談」「大人片づけ」などセミナーの開催も始めた。

 

「仕事を数字だと思ってやったから成功したけど、いまから思えば心が満たされる部分はなかった」と言う高須さん。

 

 数字だけにとらわれず、10年ぐらいでコミュニティに関連した事業を形にしたいと考えている。

 

(週刊FLASH 2017年2月21日号)
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