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日本一の落語家を決めようじゃないか

ライフ 投稿日:2016.04.26 15:00FLASH編集部

日本一の落語家を決めようじゃないか

写真:AFLO

 

 《落語には「面白い落語」と「つまらない落語」があるだけだ。そして、その違いは(中略)、演者によってもたらされる》(広瀬和生著『落語評論はなぜ役に立たないのか』より)

 

 本誌は今回、落語の通人に意見を聞き、大胆にも「古今東西 おもしろい落語家ベストテン」を決定した。

 

 並み居る名人のなかで1位を獲得したのはやはりこの人、立川談志だった。

 

「やはり人情噺『芝浜』がいい。談志で聞くと何か違うし、談志なら何回聞いても毎回楽しめる」(プロデューサー・吉田正樹氏)

 

「賢い女房が亭主を更生させる美談だった『芝浜』を、亭主を愛する可愛い女の話に作り替えた。2007年12月18日のよみうりホールでの『芝浜』は、本人が『神様がしゃべらせてくれた』という伝説の名演」(落語評論家・広瀬和生氏)

 

 旅先で買ったライオンのぬいぐるみに「ライ坊」と名づけて可愛がっていた一面もある。

 

 2位は談志生涯のライバル、古今亭志ん朝。2人の落語会が企画されたとき、談志は「50円でいいから志ん朝よりギャラを高くしろ」と言ったという。

 

「人情噺『文七元結』もいいが、ばかばかしい噺もいい。『酢豆腐』など、長屋でゴロゴロしている若い連中といっしょにいる気分になる」(落語通のシンガー・ソングライター・なぎら健壱氏)

 

 3位には、存命の落語家では最上位、柳家小三治が入った。

 

「とにかく、気配がいいんです。CDなどの音で聞くんじゃなくて、目で見て聞いてほしい」(コラムニスト・堀井憲一郎氏)

 

 小三治といえばマクラ(導入部分で話す小噺)、といわれるほどマクラで有名。 「小三治のマクラは、もはや即興の新作落語です」(なぎら氏)

 

「落語のおもしろさ、引き込まれる楽しさを感じさせてくれる。2010年最後の独演会で、いっさいマクラを振ることなく入った『芝浜』は、聞いていていつの間にか噺の世界に没入していた」(広瀬氏)

 

 4位は昭和の名人・三遊亭圓生。1973年に昭和天皇の前で「お神酒徳利」を演じたことで知られる。  そして5位には同じく戦後活躍した八代目・桂文楽が入った。

 

「『明烏』で甘納豆を食べる場面をあまりにおいしそうに演じるので、寄席の売店で甘納豆が売り切れた逸話は有名」(なぎら氏)

 

「持ちネタが三十数席しかなかった。今でいう断捨離をして、名人芸に磨き上げた人」(演芸コラムニスト・渡邉寧久氏)

 

 6位は関西落語界から天才・桂枝雀。

 

「『壺算』では話しながら、ぴょんぴょん飛び跳ねる。跳躍ぶりが見事です」(吉田氏)。

 

 7位には大阪落語中興の祖・桂米朝が。

 

「個人的な思い入れですが、高校の先輩です。関西では落語の神的存在。私はこの人で落語を覚えて、大学は落研に入りました」(吉田氏)

 

 昭和の名人で人間国宝だった柳家小さん(五代目)は8位。

 

「40代で芸を完成させ、87歳で亡くなるまで維持した。晩年は滑稽なおじいさんという雰囲気で、笑わせようとしなくても、笑いを起こしました」(渡邉氏)

 

 9位には再び現役から。いま最もチケットが取りにくい落語家・立川志の輔。

 

「志の輔さんの高座は『楽しませずには帰さないぞ!』という感じ。日常的な風景をこんなにおもしろくできるのか、と驚きます」と広瀬氏がすすめる『買い物ぶぎ』は、妻に頼まれドラッグストアにお使いに行った男と間抜けな店員のやり取りで、《「おいしい猫のエサ」ってあるけど、誰がおいしいって言ったんだい?》などと笑わせる。

 

 そして10位に若手のホープ・37歳の春風亭一之輔が入った。2012年に21人抜きで真打に昇進した期待の星だ。

 

「一之輔はいい意味でずうずうしい、傍若無人な芸風。サゲで訳知り顔の客が人より早く拍手すると、噺を変えてわざと続けたりするんです(笑)」(渡邉氏)

 

 世間は暗いニュースばかり。CDで、DVDで、なにより高座で。浮世の憂さを忘れてみたい。

(FLASH+ 2015年12月5日増刊)

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