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【数字は踊る】ホッケ価格高騰はアメリカとロシアのせいだった

連載FLASH編集部
記事投稿日:2016.08.03 19:00 最終更新日:2016.08.03 19:00

【数字は踊る】ホッケ価格高騰はアメリカとロシアのせいだった

写真:AFLO

 

●アジの代用品がアジより高値に

 

「ホッケが居酒屋の定番メニューから消えそうだ」と騒がれている。実際にこの10年の間に漁獲量が減って価格が急騰。農林水産省によると、漁獲量は2008年の約17万トンから2013年には約5万3000トンと7割近く減った。

 

 乱獲により北海道近海では激減したニシンやシシャモを思い出す人もいるだろう。ホッケも、同じ道をたどることが危惧されている。

 

 日本のホッケの9割以上は北海道近海で獲れる。国産のホッケ は「マホッケ」というが、日本での流通量は2割程度。8割は虎のような縞模様を持つ輸入ものの「シマホッケ」。大きくて脂がのっているのはシマホッケのほうだ。

 

 ホッケはなんといっても開き干しがうまい。居酒屋で提供されたり、一般に売られたりしているのもほとんど開き干し。

 

 そもそもマホッケは脂が少なく大味で、地元の北海道でも人気のない魚だった。アジの開きの価格が急騰した折に、代用品として使われたのがきっかけで、1980年代には居酒屋のメニューとして定着。

 

 ホッケは大ぶりで身が厚いうえに、身離れがよく、食べやすいことから人気が出た。

 

 日本の漁獲量が減少しているのなら輸入量を増やせばいいのだが、それがまた難しい。

 

 おもな輸入先はアメリカとロシアだが、アメリカがホッケを捕食するトドの保護のために、餌であるホッケの漁獲制限をしていて、日本への輸出量が減っているのだ。

 

 築地市場におけるホッケ開き干しの2月の卸売平均価格は1kgあたり718円と、2010年以降の月々平均の最高値を記録した。ちなみに、やはり不漁から価格が上昇しているアジの開き干しは1kgあたり486円だった。

 

 ホッケはすでに高級魚化し、メニューから消えた居酒屋も出ている。

 

●ロシアが足元を見てくる背景

 

 また、ロシアからの輸入量も減っている。その理由を「乱獲による不漁」と指摘するのは、20年以上ロシア産のシマホッケを買いつけている干物加工メーカー「山尾食品」の山口栄治社長だ。

 

「かつて、一網入れると100トン近く獲れたシマホッケが、今では5~10トンしか獲れない。うちは長いつき合いだから量は確保できるけど、質が悪くなって高くなった。加工前のホッケが、4年前に1kg320円だったのが460円になり、今は520~540円」

 

 ロシアは価格を上げるために輸出量を調整しているともいう。

 

「焼き魚に使う『チリ産の銀鮭』の価格高騰が背景にあり、そのときは1kgあたり400円以下だったのが1000円になった(加工 前のもの)。だからホッケもそのくらい上げてもいいだろう、と考えている節がある」

 

 入ってくるホッケは春から夏の産卵期にかけた身の薄いものが多くなっているとのこと。

 

 山口社長は「150~200gの小さなものは輸入量が増えて安く なってきている。しかし以前のように1kg200円割れというようなことはまずない。450~500gある身の厚い大きなホッケは下 がらないね。獲れないし、ロシアもこちらの足下を見て駆け引きしてくるから……」

 

 ホッケは魚偏に花、「?」と書くが、大ぶりの花はまだまだ高嶺の花状態が続くようだ。

 

(週刊FLASH 2016年5月26日号)

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