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【数字は踊る】認知症のいまとアルツハイマー病の治療法
連載FLASH編集部
記事投稿日:2016.08.16 20:00 最終更新日:2016.08.19 17:30
●認知症に夏のは高齢者に限らない
夏ミョウガの時期だ。独特の香りを嫌う人もいるが、冷や奴やそうめんなどの薬味に欠かせない。ミョウガといえば、昔から食べると物忘れがひどくなると言い伝えられてきた。
しかし、実際のミョウガの効能は逆だ。発汗や呼吸、血液循環などの機能を促す優れものである。
物忘れは老人になれば誰でも進むものだが、認知症となると事情は異なる。2013年の厚生労働省の発表によると、認知症患者は全国で約462万人、予備軍が約400万人とされる。
高齢者(65歳以上)の4人に1人が認知症かその予備軍という計算になる。
ところで、認知症はけっして老人だけの病気ではない。意外に知られていないが、認知症は発症する20年前から始まる。したがって40代、50代はまさに病気のスタート期となる。
また若年性認知症もある。患者数はわかっているだけでも全国で4万人弱。把握されていない患者数を含めると10万人と推定されている。 「若年性」の年齢幅は18~64歳と広く、50歳以上の患者が8割以上を占めるが、若い患者もいる。
10年前に日本で公開された韓国映画『私の頭の中の消しゴム』は、若年性アルツハイマー病が進行して記憶を失っていく若い妻と、彼女を見守る夫のラブストーリーで、大ヒットした。
記憶が失われていくことは、「精神の死」とも呼ばれている。肉体が変わらないだけに見守る側はなおさら辛い。しかも、アルツハイマー病は医者でも正確に進行速度を断定できない。
●期待されるアルツハイマー病の治療法
ドラえもんの声でお馴染みの女優、大山のぶ代さんがアルツハイマー型認知症であることを夫の砂川啓介氏が公表した。アルツハイマー病は、脳の神経細胞が脱落することで脳が萎縮し記憶が失われていく。
一般的に健康時には1400gほどある脳の重量が、約800g程度になってしまう。日本では認知症全体の約半数を占める。かつて、レーガン大統領が生前にアルツハイマー病であることを公表したが、アメリカはこの病気の患者が多い。
日本と違ってアメリカはこの病気を「死因」とカウントする。アメリカで2010年にアルツハイマー病のため死亡した人は約8万3000人で、同年の死因の6番めだった。
そのアメリカでも死亡証明書では肺炎や心臓発作などの直接的な死因が記載されることが多く、アルツハイマー病や認知症による死亡数が過小報告される。
そういう数字を考慮すると、CNNは昨年、研究データをもとに心疾患、ガンに次いで死因の3位になっている可能性があると報じた。
この病気が厄介なのは原因が不明で、治療法がまだ確立されていないところだ。しかしアメリカでは今、アルツハイマー病と糖尿病の類似性に注目している研究者たちにより「経鼻インスリン療法」がおこなわれ、注目されている。
これは脳のインスリン不足を原因とする考えから、インスリンを鼻から吸ってゆっくり脳血流に到達させる治療法で、軽度の認知障害やアルツハイマー病が改善されたことが報告されている。
日本では、血液の流れをよくする薬(シロスタゾール)が認知機能の低下を防ぐのに効果があるとされ、国立循環器病研究センターなどで臨床試験が始まっている。
いずれも今後の報告に期待したいが、ドラえもんの舞台・22世紀には、決定的な治療法が出てきているのだろうか?
(週刊FLASH 2015年8月4日号)