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『舟を編む』アニメ化でわかった辞書制作者が「ら行」好きなわけ
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2016.10.13 12:00 最終更新日:2016.10.14 16:10
13日からフジテレビでアニメ放送される『舟を編む』。
原作となった小説は、出版社の辞書編集部を舞台に、『広辞苑』並の新しい辞書を一から作っていく物語。
主人公の「まじめ」君は、テレビを見ては新しい言葉をメモし、用例カードに逐一記録していく。必要な情報は、「この言葉が初めて使われたのは、どの時代のどの文献か」「新しい使われ方がされた新聞や雑誌記事」などだ。
たとえば「あがる」と「のぼる」はどう違うのか、「まじめ」君は語釈を“悶絶”しながら決めていく。
内容が地味なのかと思いきや、「辞書は言葉という大海を漕ぐ舟」だけに、まるで冒険小説のようなストーリー展開。
かつて本誌は、ある大辞典の編集部を取材している(2012年6月19日号)。
編集部入口付近の棚には、印刷前に文字の間違いがないかなどをチェックする「ゲラ」が山積みになっていた。
入稿から印刷までの時聞が短い週刊誌は多くて2回ほどのチェック(2校という)だが、辞書編集部では5校もザラ。こうしたゲラは、遡って確認するためすべて保管されており、しかもページ数が多いから、膨大な量になるのだ。
辞書編集部とほかの編集部の違いは、チームになって本作りすることがあまりないことだという。それぞれの部員が個人営業のように自分のペースで仕事をしているそうだ。
飲み会もあまりなく、せいぜい歓送迎会くらい。ただし、いったん飲み会になると話題がすごいのだという。
「『俺は“ら行”が好きだな。語数が少ないから』とか『“な行”は嫌な予感だなぁ。その次に(言葉が多い)“は行”が来るからな』とか、そんな内容ばかりで、悪口や陰口なんてまったく聞かない」(辞書編集者)
警察から「逮捕した犯人の方言が、その地方のもので合っているか教えてほしい」といった依頼も受けると言う。
辞書制作の現場は摩訶不思議。
『舟を編む』原作小説(光文社文庫)は、全国の書店員さんが「自分でぜひ売ってみたい」本を選ぶ「本屋大賞」を受賞している。秋の夜長にぜひ読んでみたい。