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東海大学の地震予測「地下天気図」のおそるべき的中率
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2017.01.26 15:00 最終更新日:2017.01.26 15:00
東日本大震災から5年の節目を迎えた2016年。日本列島では、相変わらず大きな地震が猛威を振るった。4月16日未明、157人の尊い命を奪ったM7.3の熊本地震。10月21日には、鳥取県中部でM6.6の地震が発生。その1カ月後の11月22日には、福島県沖でM7.4の津波をともなう東日本大震災の余震が発生。
だが、久々の余震にしてはマグニチュードが小さかったので、まだエネルギーが溜まっている可能性があるという。
「福島沖地震は、私たちが作成した『地下天気図』には、宮城県沖と岩手県沖で同じような傾向が出ていました。福島県沖の地震は明らかに3・11の余震ですが、こういった地震が福島県沖で起きたということは、宮城県沖や岩手県沖で、もっと大きなM8.0クラスの余震が、いつ起きてもおかしくないということです」
こう語るのは、東海大学海洋研究所地震予知・火山津波研究部門の長尾年恭教授(61)。長尾教授は、阪神・淡路大震災が発生した1995年から、東海大学地震予知研究センター長として、M6以上の大きな地震の予知に取り組んできた地震予知のエキスパート。
地下天気図とは耳慣れない言葉だが、これは長尾教授らが4、5年前から研究している地震予知プロジェクトの手法で、地震活動を可視化し、その発生を天気図のように予測しようとする試みのこと。長尾教授が解説する。
■伊豆半島から房総沖、広島、山口、島根に異状
「地震活動を天気図の低気圧、高気圧になぞらえて視覚的に表現したものです。低気圧は、通常起きている小さな地震活動の回数が低下(静穏化)している地域。高気圧は、小さな地震活動が活発なため、逆に大きな地震が起きにくい地域です。大きな地震は静穏化領域や、その周辺部で発生する事例が多いです。
また、熊本地震のように低気圧が消えた後(静穏化終了後)、しばらくして発生することもあります。一般的には、静穏化現象が長いほど、発生する地震のマグニチュードは大きくなります。地震が起きていないときのほうが危ないというのが、地震学者の共通認識です」
地震学者の間で、「地震空白域」と呼ばれる現象である。地震もストレスと同じ。要は溜め込まず、適度に発散したほうがいいのだ。地震空白域とは、かつて地震活動があったが、長期間にわたって地震が起きていない地域のことで、第1種と第2種に分けられる。
第1種空白域は、おもに海溝型地震の発生地帯のなかで、周囲では大地震が起きているにもかかわらず、大地震が起きていない地域を指す。
第2種空白域は、地震活動静穏化域とも呼ばれ、通常の小さな地震活動(直下型地震)多発地帯のなかで、ぽっかりと回数が減っている地域のこと。地下天気図で表示しているのは、この第2種空白域が主である。
地下天気図は、2016年5月から有料会員向け(月額216円)に配信サービスを開始したばかり。今回は特別に、掲載許可を得た。いずれも、地震発生前の天気図には、不気味な黒い低気圧の存在が見て取れる。
「熊本地震の低気圧が消えたのは、2015年12月でしたから、消えてから4カ月後に地震が起きたことになります。我々は約1カ月前にも、九州北部の地震を予測していたのですが、実際に起きたのは熊本でした。
地下天気図では、数カ月先単位ならどこが危ないかということは予測できます。
最新の地下天気図では中国地方の広島県、山口県、島根県に異状が現われている。あとは、北信越地方と伊豆半島から相模湾、房総半島沖が気になります。秋田県沖に関しては、低気圧が消えかけているので、酒田市沖で津波をともなうM7.8くらいの大きな地震がいつ起きても不思議ではありません」(長尾教授)
2016年12月付の最新の地下天気図を見ると、中国地方と北信越地方、そして伊豆半島から相模湾、房総半島沖が低気圧で覆われている。消えかかっている福井県沖と秋田県沖も気がかりだ。
■西日本で直下型頻発は南海トラフ地震の前兆
ほかに危ない地域はないのか? 長尾教授は、房総半島沖の地震を危惧する。
「伊豆半島から相模湾、房総半島沖に関しては、九十九里の海岸沿いでM6.5~7.0くらいの地震と、もっと沖合でM8.0クラスの地震が起きる2つの可能性が十分にあります」
伊豆半島東方沖、房総半島南方沖、高知県沖南海トラフ、秋田県男鹿半島沖、新潟県新潟市沖、島根県東部……。いずれも、日本国内に現存する代表的な地震空白域である。
嵐の前の静けさが破られる日は、そう遠くなさそうだ。
(週刊FLASH 2017年1月10日号)