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辛坊治郎の「Q&A日本国憲法」(1)そもそも憲法って何ですか?

社会・政治 投稿日:2016.05.03 11:00FLASH編集部

辛坊治郎の「Q&A日本国憲法」(1)そもそも憲法って何ですか?

 

 あなたは「憲法」の何を知っているか? 本誌連載でもお馴染みの辛坊氏による「初級編の解説」からお届けしたい。

 

【Q1】憲法って何ですか?

【A1】

 これってけっこう難しい質問です。そもそも、「憲」も「法」もともに「きまり」っていう意味の漢字で、古代中国ですでに存在した文字です。日本に漢字が伝わり、中国と同じ意味で使われるようになって作られたのが、ご存じ聖徳太子の「十七条の憲法」です。

 

 私はこの憲法こそ、日本で最初の憲法として尊重されるべきものだと思っています。「和をもって尊しと為す」から始まる十七の条文には、見事にこの国が目指すべき国のかたちと、守るべき根本原理がはっきりと示されているんです。

 

 憲法というのは、まさにこの「国のかたち」を決め、「守るべき規範」の根本を定めるものなんです。これが作られたのがなんと604年ですから、日本というのは相当な先進国家だったってことがわかります。

 

 憲法は、国のあらゆる法規範の根本原則を定めたものですから、憲法に違反する法律や条例を作ることはできません。現実には、国会で可決すればどんな法律を作ることも可能ですが、その法律をもとにトラブルが起きて国が訴えられた場合、裁判所が「その法律は憲法違反である」と判断することになります。

 

 日本にはありませんが、多くの国には個々の法律が憲法に違反するかどうかを直接審査する裁判制度があります。

 

【Q2】近代憲法の起こりとは?

【A2】

 日本が近代国家としてスタートするときに作った「大日本帝国憲法」がお手本にしたのは当時、皇帝のいたドイツの憲法でしたが、世界的にみると近代憲法の発祥は、1776年の「アメリカ独立宣言」とそれに続く「合衆国憲法」、そして1789年のフランス革命の際に発せられた「人権宣言」です。

 

 憲法の議論で、「憲法は国という大きな権力が暴走しないように縛るためのものだ」っていわれるのは、国王の圧政から人民を解放するために作られた近代憲法の成り立ちに由来します。

 

 多くの憲法学者は今でも、この基本スタンスを崩していません。だから、あとで述べる自民党改憲案に、国が国民に注文をつけるような文言が入っていることに拒否感を持つ学者が多いんです。

 

【Q3】すべての国に憲法はありますか?

【A3】

 あります。なぜなら「憲法」というのは、国のかたちをきめる根本原理ですから、「憲法」がないってことは、「国家」がないってことと同じです。

 

 まあ、これを言い出すと、そもそも「国家って何よ?」っていう話になります。このあたりはそのうち考えるとして、「憲法なくして国家なし」って言えるくらい大切な決まりだってことです。

 

 ただし、憲法のなかには日本のように一つの大きな塊として「憲法」が存在する国がある一方、長い間に積み重ねられた重要な「きまり」そのものが「憲法」であるっていう国もあるんです。

 

 前者を成文憲法、後者を非成文憲法っていいます。ほとんどの国は成文憲法を持っていますが、イギリス、ニュージーランド、サウジアラビア、オマーン、イスラエルなどは非成文憲法国です。

 

 イギリスでは1215年に国王と貴族の間で結ばれた「大憲章」以降の「きまり」の積み重ねが憲法ですし、宗教国家にとっては聖典こそが国家の根本原理っていうことなんでしょうね。

 

【Q4】どうして憲法改正が議論になっているの?

【A4】

 最大の理由は、現行憲法は「アメリカに押しつけられた」って思っている人がたくさんいるからです。それ以外に、現行憲法が効力を持ちはじめて70年近くがたち、その間、一度も修正が加えられたことがないために、「根本原理が時代に合わなくなっているんじゃないか」って考える人もいます。

 

 その一方で、「第二次世界大戦後、日本が世界の紛争に巻き込まれず、一人の兵士も死ななかったのは現行憲法のおかげだ」と考える人がいて、憲法を変えたいっていう人と、絶対変えたくないという人が鋭く対立しているのが現在の日本の姿です。

 

【Q5】現行憲法が「アメリカに押しつけられた」っていうのは本当?

【A5】

 本当です。日本が戦争に敗れたのは1945年ですが、占領下の日本で絶対の権力を握っていたマッカーサー元帥が翌年1946年の2月初めに方針を示し、法律知識のある中堅将校たちが起草したのが現行憲法の原案となりました。

 

 日本の主権がない状況下で成立した憲法ですから、少なからぬ人たちが、「この憲法は日本人が作ったものじゃない」と主張するのには、一定の理由があると言えます。

(その2に続きます)

 

(週刊FLASH 2013年9月24日号)

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