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舛添要一「私はねずみ男」発言に見る「品格」の欠如

社会・政治 投稿日:2016.06.03 17:21FLASH編集部

舛添要一「私はねずみ男」発言に見る「品格」の欠如

写真:アフロスポーツ/アフロ

 

 大阪観光大学観光学研究所客員研究員の濱田浩一郎氏が、舛添都知事の金銭疑惑と人間の品位について考える。


 

「政治家になった最大の理由は、国民を幸せにしたい、ということです。その思いは今も変わっていません」

 

 6月3日の定例会見で、平然と語った舛添要一都知事。政治資金をめぐる公私混同疑惑が立て続けに報じられるなか、会見をするたびにふてぶてしくなっていくように見える。

 

 舛添氏は6月1日時点で都知事の職にあったため、夏のボーナスに当たる期末手当約380万円を手にすることが確定した。今年度の舛添氏の給与は月145万6000円。年収計算だと約2900万円で、都知事を辞任せず4年務めれば、退職金約3600万円も手に入る。

 

 舛添氏は「ケチだといつも言われる。領収書は必ずもらう習性がある」と自分で語っているが、同じようにケチだと有名なのが、東京のトップならぬ江戸のトップだった徳川家康である。

 

 1716年、熊沢猪太郎が刊行した『武将感状記』には、家康のケチぶりが書かれている。

 

 家康は30歳の頃、夏はいつも麦飯を食べていた。あまりのケチぶりを見かねた家来が白米を混ぜて出すと、家康は呆れてこう言った。

 

「オレはケチだから麦飯を食べているのではない。戦乱の世で、兵士はいつも休みがなく、衣食も不足しがちなのに、自分だけが贅沢できないではないか。だったら、倹約して軍事費に回したほうがいい」

 

 軍事費の不要な現代では、社会福祉や貧困対策など喫緊の課題にカネを回すということになるだろう。家康はケチだと言われると、いつも天下のための倹約と言い返した。

 

 舛添氏は、1999年、最初の都知事選に出馬する(落選)。そのとき、新聞のインタビューで財政問題について聞かれ、

 

「一部の事務職員が受け取っている危険手当、不明朗な功労金、黒塗りの公用車……。都庁はまさに伏魔殿になっている。外郭団体のリストラ、天下りの全面禁止を含め徹底的に改革のメスを入れます。そうすれば4年間で5000億円の歳出カットはできる」

 

 と語っていた。他人のカネは減らすが、自分のカネは金輪際減らさないというのでは、人はついてこないだろう。

 

 その後、舛添氏は厚生労働大臣になって年金問題に汗を流した。在任中に迎えた正月、舛添氏は年男(干支はネズミ)として『スポーツ報知』(2008年1月7日づけ)にこんな抱負を語っている。

 

「これでも若いころは髪が長くて『ゲゲゲの鬼太郎』なんてあだ名を付けられたものだけど、今はだんだん髪が薄くなって『ねずみ男』になっちゃったよ(笑い)。とにかく、国民が豊かになるよう、政局にはタッチせず、今の職務に集中し、ネズミのように細かくあらゆる問題に対応して頑張るつもりだ」

 

 国民を幸せに、国民を豊かに――発言当時は本人も本気だったのだろうが、疑惑が噴出する今となっては、この言葉はあまりに軽い。

 

 言うまでもなく、ねずみ男とはケチでずるい男の代名詞だ。かつて冗談で「自分はねずみ男」と言った舛添氏は、いつのまにか本当にねずみ男のように卑しい心根になってしまったのかもしれない。

 

 調査結果はまもなく公表される。もし金銭疑惑が真実だったとしたら、舛添氏に1票を投じた有権者は救われない。

 


 

(著者略歴)

濱田浩一郎(はまだ・こういちろう)

 1983年生まれ、兵庫県相生市出身。歴史学者、作家、評論家。現在、大阪観光大学観光学研究所客員研究員。現代社会の諸問題に歴史学を援用し、解決策を提示する新進気鋭の研究者。著書に『日本史に学ぶリストラ回避術』『現代日本を操った黒幕たち』ほか多数

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