エンタメ・アイドル
新堂冬樹、新連載『戦国虫王』は「虫界の異種格闘技戦に注目」
日本の虫だけでなく、海外のマニアックかつ凶暴な虫が次々と登場し、バトルを繰り広げたDVD『世界最強虫王決定戦(虫王)』シリーズ。各メディアに、その衝撃的な内容が取り上げられ、一大ムーブメントを巻き起こした。
それから10年以上の時を経て、『虫王』が新たな形でよみがえる。それが、小説「戦国虫王」だ! 執筆するのは『虫王』シリーズのすべてをプロデュースしてきた、作家の新堂冬樹氏。今回、小説化に至ったきっかけを聞いた。
【関連記事:新海誠「自分の書いた小説が映画館への入口になっている」と実感】
「『虫王』では、各虫にキャッチフレーズがついていたんです。たとえばオオスズメバチには、『世界最凶の殺人バチ』とか。もともと当時から、『この虫は、こういうキャラなんじゃないかな』というような、虫を擬人化するイメージは持っていたということですね。
シリーズが終了し、自分も小説家としてキャリアを重ねてきたなかで、次第に『虫王』の世界はキャラクターの玉手箱だったと思うようになりました。
そこで、言葉で表現するのが仕事の小説家として、『彼らの群像劇を仕立て上げたらおもしろいんじゃないか』と考えたんです」
舞台は、かつての日本。圧倒的なパワーで幕府を率いるカブトムシ将軍が、クワガタ藩の藩主・ノコギリクワガタと真剣勝負を始めるところから、物語はスタートする。
「カブトムシは、国内においては絶対王者。だからといって、カブトが勝ち続ける、ということにはなりません。そしてカブトにとってノコギリクワガタは、ライオンに対するトラのような存在。
子供にはどちらも人気があるけど、スタイルが違いますよね。国技を守る、柔道家のようなイメージがカブトにはある。かたやノコギリは、バーリトゥードとか、総合格闘家という感じ。なんか体つきも、そんな感じでしょ?」
この小説の最大のおもしろさは、虫界の “縮図” をそのまま、戦国・幕末時代の日本に置き換えて展開されるストーリーにある。
「日本を治めるカブト将軍、そして宿敵ともいうべきクワガタ軍との力関係とか。
それから、途中からオオスズメバチが、幕府転覆を狙う重要なキャラとして登場します。クワガタと結託するのか、あるいは毒を持つ者同士、ムカデなどと結託するのか。こういった『異種格闘技戦』がどのような感じで描かれるのか、注目してほしいです」
さらに物語の先には、『虫王』でも大注目を浴びた、外来種の虫たちが登場する。
「まさに、黒船の襲来です。それまで最強といわれていた日本のカブトやクワガタの、何倍も体があるような連中がやってきます。外国産カブト・クワガタだけでなく、巨大なサソリやクモまで。そのへんのパワーバランスも、おもしろいでしょう。
刀や槍で戦っている日本の侍をあざ笑うようにやってくる、巨大な海外勢。『お前たち、そんな武器で軍艦に向かっていくつもりなのか』と。コーカサスオオカブトの光沢なんて、まさに軍艦を彷彿とさせますよね」
小説に登場する虫たちのバトルは、一歩間違えるとたんなる空想話で終わってしまう。しかし『虫王』シリーズで、実際の壮絶な闘いを間近で見てきた新堂氏の筆力には、ほかにないリアリティがある。
「戦いの力関係とか、勝敗のつき方、動きとか、そういったものは、ほぼリアルのパワーゲージでやっています。そこに、性格や会話などを肉づけしているので、普通の『虫バトル』よりもっと、劇画的に膨らんでいます。
これはもう、虫たちが俺に憑依して書かせているとしか思えない。だから、かなりリアルな虫たちの“声”だと思いますよ。ただし俺の場合、書いているうちにキャラクターが “動く” んです。だから、打ち合わせのときと、まったく違う内容になることも。
たとえば今の段階では、オオカマキリはカブト幕府にいるけど、クワガタやオオスズメバチ、ムカデの誘いに乗って……みたいなこともあるかもしれません」
『戦国虫王』は、いよいよ5月19日に発売する本誌で、連載がスタートする。
「20年、作家生活をやって、100冊くらい書いているけど、俺が書いてきた作品のなかで、いちばんおもしろいといっても過言ではない。先がどうなるか、まったくわからないから、ワクワクするね!」
次のページでは、同作の主要キャラクターたちを紹介する。