さらに、みずからの “二つ名” にまつわる、驚きの秘話を明かしてくれた。
「よく言われるけど、俺は自分が “Vシネマの帝王” だとは思ってない。“ビデオショップの帝王” だと思ってる。意味わかるか? 全国2000店のビデオショップを、まわってきたからだよ。電話営業なら、ざっと6000店はしたよ。
店長会議にも出たし、ビデオソフトの営業マンが持って歩く、手書きの指示書まで作った(笑)。それで、『広島やくざ戦争』(2000年、辻裕之監督)は1万7000本売ったんだ。
今でも、撮影で地方行くだろ。ビデオショップ見つけたら、すぐ入ってって、店長とツーショット撮る。そこまでやらなきゃダメ。どんなにいい作品作っても、負けたら次はない。そこまでやるから、俺のビデオはコケねえんだ」
しかし、小沢の “ホーム” であるビデオショップは今、苦しい状況にある。
「たしかに、数は減ってきてる。だけど、俺は今が攻めどきだと思ってる。少し前まで、『Vシネ? 『アウトレイジ』のこと?』と言われたり、芸能事務所に『うちの俳優は、Vシネには出しません』と言われてた。
いまは動画配信サイトで『日本統一』が3位~4位とかにランクインしたりする。すると、俳優のほうから『出演させてくれ』と頼みに来るよ」
追い風が吹いているのは、出演者の面だけではない。
「各地に『小沢会』というのが自然発生的にできてきて、ロケ協力をしてくれるわけ。『日本統一』は5月の新作で39本めになるけど、エキストラや劇中で使う車も、そうやって調達しちゃう。
それでもまだ、『フィルム・コミッション(※)』も知らない自治体の首長がいるからね。こないだも、四国のある市長を直に口説いて、『日本極道戦争』の撮影をそこでやった。ドロドロのヤクザものだけど、しっかり観光地をアピールして、旨いもの食うシーンも入れてよ(笑)。
『Vシネを応援してくれてる人が増えている』という実感があるんだよ」
ファンからは “兄ぃ(あにぃ)” と慕われ、ブログには「メルセデス、2台持ってます。撮影に使ってください」というラブコールがくることも。ファンや共演者、仲間たちの心を掴み、旅をしては旨いものを喰らう。男冥利に尽きる。
※フィルム・コミッション:自治体や観光協会などが主体となり、映画やドラマの誘致や撮影支援をする機関
おざわひとし
1962年6月19日生まれ 東京都出身 1983年に『太陽にほえろ!』(日本テレビ系)に出演後、『スクール☆ウォーズ』(1984年、TBS系)で本格的に俳優デビュー。1990年の『ベレッタM92F 凶弾』(原隆仁監督)以来、Vシネマ出演歴は30年になる。映画監督、プロデューサーの顔も持つ。最新情報は、「小沢仁志 オフィシャルブログ」にて
【SHOP DATA/焼肉一七三】
・住所/東京都渋谷区恵比寿西1-9-2 YAMAビル1F
・営業時間/15:00~25:00(LO24:00)、日祝15:00~23:00(LO22:00)
・休み/不定休
取材&文・鈴木隆祐
※※本記事の取材・撮影は「緊急事態宣言」前におこなわれました
(週刊FLASH 2020年4月21日号)