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名曲散歩/伊藤つかさ『少女人形』歌番組には出たくなかった…

エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2020.05.31 16:00 最終更新日:2020.05.31 16:00

名曲散歩/伊藤つかさ『少女人形』歌番組には出たくなかった…

 

 東京・神田の古いビルの2階。そこには夜な夜な紳士淑女が集まり、うんちくを披露しあう歌謡曲バーがあるという。今宵も有線から、あの名曲が流れてきた。

 

お客さん:お、このイントロは、伊藤つかさの『少女人形』。不安定な歌唱力……守ってあげたくなるような存在だったねえ。

 

 

マスター:日本ドラマ史上に残る傑作『3年B組金八先生(第2シリーズ)』(TBS系)のマドンナね。

 

お客さん:役名は赤上近子! 教卓の真ん前に座っている丸顔と八重歯が可愛い女の子だったなあ。

 

マスター:当時、伊藤つかさは公立中学校に通っていたんだけど、通学時間になると家の前に黒山の人だかりができたという。そんな彼女を助けたのが、同じ中学の野球部の同級生たち。ボディーガード役を買って出て、学校までの道のりを守ったそうだよ。

 

お客さん:青春だなあ。

 

マスター:『少女人形』で歌手デビューしたのは『金八先生』の放送終了から半年後の1981年9月。この時点でまだ14歳だったんだ。

 

お役さん:14歳ということで『ザ・ベストテン』に出られなかったよね。

 

マスター:そう、夜8時以降、15歳未満の子供は働いてはいけないという「労働基準法」に当たるため、番組では事前収録したVTRを流さなければならなかった。ただ、本人が語った真実はちょっと違うんだ。

 

お客さん:ん? 真実?

 

マスター:実は本人が「人前は苦手で恥ずかしいから、歌いたくない!」と強硬に主張したそうなんだ。仕方なく、周りの大人たちがいろいろ方法を探したところ、労働基準法があったので、これを言い訳にしちゃえ! となったらしい。
     

お客さん:あれま、本人が出たくなかったのか……。とはいえ、素材そのものの可愛らしさ、普通っぽさは魅力だったよねえ。

 

マスター:そりゃ普通だったよ。なんたって所属していた劇団の方針で、ノーメイクだったんだから。さらにレコーディングのときは「練習させてください」と言っても、大人たちから「そのままでいい」と、練習させてもらえなかったんだって。

 

お客さん:普通っぽいじゃなくて、ホントに普通の14歳だったんだね。

 

 おっ、次の曲は……。

 

文/安野智彦
『グッド!モーニング』(テレビ朝日系)などを担当する放送作家。神田で「80年代酒場 部室」を開業中

 

参考:『スナック胸キュン1000%』(トゥエルビ、2019年3月18日)/『語れ!80年代アイドル』(KKベストセラーズ)

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