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名曲散歩/H2O『想い出がいっぱい』が示したタイアップの金脈
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2020.07.05 16:00 最終更新日:2020.07.05 16:00
東京・神田の古いビルの2階。そこには夜な夜な紳士淑女が集まり、うんちくを披露しあう歌謡曲バーがあるという。今宵も有線から、あの名曲が流れてきた。
お客さん:お、このイントロはH2Oの『想い出がいっぱい』、甘酸っぱい思い出がよみがえる青春ソングの決定版だね!
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マスター:アニメ『みゆき』(フジテレビ系)のエンディングテーマで、いまや音楽の教科書にも載っている名曲中の名曲だよ。
お客さん:1983年のヒット曲だけど、いまもCMに起用されているよね。
マスター:H2Oは長野県出身の赤塩正樹と中沢堅司による男性デュオ。『想い出がいっぱい』は初のオリコントップ10入りを果たした曲だ。
お客さん:それにしても、H2Oって変わったユニット名だね。
マスター:水のように透き通ったハーモニーが評価されていて、「音楽で化学反応を起こしたい」という2人の思いから、自然発生的に決まったそうだよ。ただ、この曲に関しては複雑な思いがあったという。
お客さん:フクザツ?
マスター:そう、これはH2Oにとって5枚目のシングルだったんだけど、それまで大きなヒットがなかった。だから事務所から、あと半年で契約終了と通告されていたという。
お客さん:崖っぷちだったんだね。
マスター:そう。そこで作詞を阿木燿子、作曲を鈴木キサブローというヒットメーカーに託したところ、これが起死回生の大ヒット!
お客さん:よかったじゃない!
マスター:ただ、高校時代から自分たちで曲作りしてきた彼らにとっては複雑だよね。「ヒットしたありがたさと悔しさ」がこの曲にはあったそうだよ。
お客さん:確かにねえ。
マスター:とはいえ、2人の透き通った歌声でなければ売れなかったかもしれない。そして、この曲は日本の音楽シーンを変えたことでも知られている。それまで『宇宙戦艦ヤマト』や『銀河鉄道999』など劇場版アニメから生まれたヒットはあったけど、『想い出がいっぱい』はテレビアニメからオリコントップ10入りした初めての曲なんだ。
お客さん:杏里の『CAT'S EYE』はこの後だから、テレビアニメが有効なタイアップになることを教えてくれた曲ともいえるんだね。
おっ、次の曲は……。
文/安野智彦
『グッド!モーニング』(テレビ朝日系)などを担当する放送作家。神田で「80年代酒場 部室」を開業中
参考:『昭和40年男vol.44』(クレタパブリッシング)