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名曲散歩/大沢誉志幸『そして僕は途方に暮れる』は “流浪の歌” だった
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2020.08.02 20:00 最終更新日:2020.08.02 20:00
東京・神田の古いビルの2階。そこには夜な夜な紳士淑女が集まり、うんちくを披露しあう歌謡曲バーがあるという。今宵も有線から、あの名曲が流れてきた。
お客さん:お、このイントロは、大沢誉志幸の『そして僕は途方に暮れる』。独特のハスキーボイスがセクシーだよね!
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マスター:いきなりだけど、「毎度おなじみ流浪の番組、タモリ倶楽部でございます」ってフレーズ知ってるよね。
お客さん:突然どうした?
マスター:実は『そして僕は途方に暮れる』も流浪の曲なんだ。
お客さん:流浪の曲?
マスター:この曲はもともと別のタイトルで、鈴木ヒロミツ、山下久美子、鈴木雅之、それぞれに提供したそうなんだけど、そのたびに録音されずに戻ってきたという。
お客さん:そりゃ、途方に暮れちゃうね。
マスター:あるとき、担当プロデューサーに「人に書いた曲で、まだ世に出てないものはないか」と聞かれ、この曲を引っ張り出してきたという。
お客さん:ずいぶん回り道したね。
マスター:そこに作詞を担当した銀色夏生によるタイトルと、「出ていく女とそれを見送る男」という世界観を描き、そして編曲家・大村雅朗による印象的なイントロ等を加え、傑作となった。
お客さん:日清カップヌードルのCMソングにも起用されたし、いい曲はいつか日の目を見るんだね。
マスター:『そして僕は途方に暮れる』はのちに、福山雅治、甲斐よしひろ、中森明菜、柴咲コウなど、たくさんのアーティストにカバーされているよ。
お客さん:みんな、この歌が好きなんだね。
マスター:余談だけど、大沢誉志幸は鈴木雅之のソロデビューシングルに『ガラス越しに消えた夏』を提供したんだ。実はこれ、『そして僕は途方に暮れる』で別れた男女の “その後” を描いた曲なんだって。
お客さん:名曲は名曲につながっていたんだねえ。
おっ、次の曲は……。
文/安野智彦
『グッド!モーニング』(テレビ朝日系)などを担当する放送作家。神田で「80年代酒場 部室」を開業中
参考:『昭和40年男 Vol.37』(クレタパブリッシング)/富澤一誠『J-POP名曲辞典300曲』(ヤマハミュージックメディア)/スージー鈴木『1984年の歌謡曲』(イースト・プレス)