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名曲散歩/細川たかし『北酒場』不運な療養からつかんだヒット

エンタメ・アイドル 投稿日:2020.08.09 16:00FLASH編集部

名曲散歩/細川たかし『北酒場』不運な療養からつかんだヒット

 

 東京・神田の古いビルの2階。そこには夜な夜な紳士淑女が集まり、うんちくを披露しあう歌謡曲バーがあるという。今宵も有線から、あの名曲が流れてきた。

 

お客さん:お、このイントロは、細川たかしの『北酒場』。突き抜ける伸びやかな高音、しみじみ上手いよねえ!

 

 

マスター:この歌は、『欽ちゃんのどこまでやるの!』(テレビ朝日系)から生まれたヒット曲だ。

 

お客さん:細川たかしは、なんで『欽どこ』に出ることになったの?

 

マスター:実は1981年、『8時だョ!全員集合』(TBS系)の本番中、坂道をかけ上がるゲームで転んでアキレス腱を切ってしまい、半年ほど療養生活を余儀なくされた。だいぶよくなってきた頃、『欽どこ』に民謡の先生役として呼ばれたんだ。

 

お客さん:そうだ。『欽どこ』には、いろんなジャンルの人が出ていたよね!

 

マスター:細川たかしにとっては久々の表舞台だったから、番組が終わったあと、しみじみ「テレビに出るのって、いいなあ~」とつぶやいたという。

 

お客さん:それを萩本欽一が聞いていたんだね。

 

マスター:そう。それで「細川君、来週ヒマ?」と聞くと「ヒマ!」、「再来週は?」「ヒマ!」、「じゃあ、毎週ここに来れば?」って感じでとんとん拍子にレギュラー出演が決まったんだって。

 

お客さん:それから、番組内で『北酒場』を歌うようになったんだよね。歌い出すと途中で欽ちゃんに止められる演出が楽しかったなあ。

 

マスター:もともとシングルにするつもりはなかった曲なんだけど、『心のこり』以来7年ぶりの大ヒットとなり、1982年のレコード大賞を受賞した。しかも翌年は『矢切の渡し』で2年連続レコード大賞という離れ業!

 

お客さん:すべては『欽どこ』から始まったんだね。

 

マスター:欽ちゃんは「不運が大きければ大きいほど、そのあとにやってくる幸運も大きい」という考えの持ち主だからね。

 

お客さん:細川たかしはケガで最悪な状態のときに、運がたまっていたんだろうね。

 

 おっ、次の曲は……。

 


文/安野智彦
『グッド!モーニング』(テレビ朝日系)などを担当する放送作家。神田で「80年代酒場 部室」を開業中

 

参考:『昭和40年男 Vol.25』(クレタパブリッシング)/萩本欽一『続ダメなときほど運はたまる』(廣済堂新書)/BS朝日『人生、歌がある』(2020年8月1日)

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