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岩井志麻子が推す「恐怖マンガ5作」ホラーは、よく当たる占い師
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2020.08.21 11:00 最終更新日:2020.08.21 11:00
行楽地に行くのがはばかられる今年の夏は、恐怖マンガでも読んで、家で涼みましょう! 背筋も凍る作品を、ホラーが大好きな作家・岩井志麻子が教えます。
数多くのホラー小説を発表している岩井。その原点は、幼少時代に友人たちから受けた、イジメ体験にあった。
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「からかわれるとか、イジられるとか。昭和40年代の、岡山県の田舎ですから、そんなハードなものではなかったですが、『なんとか、そこから浮上したい』と思っていて。
そんなとき、まわりに怖い話やエッチな話をしたら、ちょっと人気者になれることに気づいたんです。子供に限らず、人が集まると、だいたいそういう話になるでしょう?(笑)」
また、1970〜1980年代にかけて起きた、いわゆる「オカルトブーム」が、彼女の世代を直撃したことも大きい。
「中岡俊哉先生の心霊写真集は、いまでも実家に全部あると思います。『犬神家の一族』『八つ墓村』『ノストラダムスの大予言』など、当時はオカルト色の強い作品が多く、めちゃめちゃ怖いと思いつつも、引き寄せられていました」
今回、ピックアップした作品のひとつ、楳図かずおの戦慄の大傑作『洗礼』も、当時を代表するものだ。
「楳図先生の作品は、ほぼすべて読んでいます。先生は、画がとても魅力的。美人は、とんでもない美人に、醜い人は、とことん醜く描く。そのビジュアルが強烈ですね。
『洗礼』は、大人になってあらためて読むと、人生の『予言の書』であったなぁ、と思います。
主人公は、自らの美しさを求めて自分の娘を殺し、自分の脳を移植しようと考えます。彼女の夢は『普通の奥さんになること』。私もどこかで、普通の奥さんになりたいと、ずーっと思っているんですけど、いちばんかなえられないことなんですよね」
『天人唐草』は、山岸凉子の代表的な短編作品のひとつで、いまも語り継がれる名作だ。
「私と同世代の人は、『ぎえーっ』といえば、この作品だとわかります。物語の冒頭、主人公の女性が空港で『ぎえーっ』と叫ぶんです。そのインパクトがすごかったですね。
彼女は、とくに悪いことをしていないのに、負のスパイラルから抜け出せない人生に陥ってしまった。何度も立ち直るチャンスが訪れますが、厳格な父親の意見に従ってしまう。
よほどの気づきや強い意志がなければ、そこから逃れられないもの。まわりの人からの助言やチャンスをふいにしているところが、とても怖いんです」
怖いながらも引き寄せられる、ホラーの魅力とは?
「自分を解き明かしてくれるものだと思います。『自分はこういうものを怖がる人間なんだ』と理解できるんです。よく当たる占い師に『あなたは、こういう人です!』と、言い当てられたような気持ちになりますね。
『自分』って、ミステリアスなもの。わかっているようで、わかっていないですからね」
【岩井志麻子が推す「恐怖マンガ」5作】
●『洗礼』楳図かずお/小学館
「主人公は、絶世の美女といわれた女優。年を重ねて老けていくことに嫌気がさし、娘を殺して自分の脳を移植して、少女として生まれ変わろうとします。そんな彼女が描く夢は『普通の奥さんになること』」(岩井・以下同)
●『天人唐草』山岸凉子/潮出版社
厳格な父に育てられた主人公の女性は、過剰なまでに他者を警戒し、人の目を気にしながら成長していく。「父親が求める女性像を追い求めたことで、不幸へと突き進んでいく。彼女が空港で叫ぶ『ぎえーっ』のインパクトがすごかった!」
●『恐怖新聞』秦企画/CWF
つのだじろうの代表作。1日読むごとに100日ずつ寿命が縮まる「恐怖新聞」によってもたらされる、不幸な未来の恐怖を描く。
「どんなに拒んでも、窓を突き破って『恐怖新聞』が届きます。そこには恐ろしいことが書いてあり、それが現実に起こるんです」
●『エコエコアザラク』古賀新一/秋田書店
女子中学生の黒井ミサが、黒魔術を駆使して人を不幸に陥れていく。
「悪いことをした人に仕返ししたり、善良な人を助けたりもしますが、基本は気まぐれ。適当に選んだ人を、罠にかけるようなことをします。魔術を使った人体実験です」
●『魔太郎がくる!!』藤子スタジオ
「イジメられっ子の魔太郎が、『倍返し』どころか『100倍返し』の復讐をするので、読後にスカッとします。『メキシコの死者の日』『マグリットの不思議絵』など、いろいろな知識も学べます。復讐するときは、薔薇柄のシャツとマント姿が定番」
いわいしまこ
1964年12月5日生まれ 岡山県出身 1982年、第3回小説ジュニア短編小説新人賞に佳作入賞。1986年に小説家デビューし、『ぼっけえ、きょうてえ』が第6回日本ホラー小説大賞(1999年)、第13回山本周五郎賞(2000年)を受賞。2002年には、『岡山女』が直木賞候補に