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ちばてつやの「楽しい終活」漫画家人生64年、今がいちばん充実
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2020.08.26 16:00 最終更新日:2020.08.26 16:00
81歳にして、オールカラー連載。肉体的には、きつい部分もあるという。
「いまも草野球やテニスをしているので、体力に自信はあるのですが、網膜剥離をやったせいか、長時間の執筆ではとにかく目がつらいですね。描くための意欲は尽きないのに、目が疲れて描けないというときはつらいです」
執筆時に使う眼鏡は、瞳の乾燥を防ぐために、フレームに水を入れるスペースがある特注品だ。目が疲れると、屋根裏の仕事部屋の奥に敷かれた布団で仮眠を取る。そのまま、そこで朝を迎えることもある。そうまでして、現役で漫画を描き続ける原動力は、どこにあるのだろうか。
「週刊連載を複数抱えていたころ、『あしたのジョー』とかを描いていても、“つらい” “きつい” という気持ちだけでしたが、今は描いていてとにかく毎日楽しいんです。漫画家人生で、今がいちばん充実していると思います」
ちばほどのキャリアを誇る漫画家でも、描き続けながら「納得できる瞬間」を求め続けているという。
「いくつも連載を抱えていた忙しい時代、自分が『いい漫画が描けた』と納得できたのは、はっきり言って年に数回だけでした。締切りに追われ、納得いかないまま原稿を出版社に渡して後悔したことも多々あります。
いまは自分のペースでじっくりと取り組める。『いい漫画が描けた』という自分の納得や喜びのために、描き続けているような気もします。年寄りになった今でも、そんなときは年に数回しか訪れないのですが」
『ひねもすのたり日記』では、戦時中のエピソードや、家族の死などについても描かれている。
「僕自身は爺なりに元気なのですが、自分の少女漫画時代の最初の担当さんが亡くなったりと、死を身近に感じることも増えてきました。だからこそ、夜寝る前は『今日も無事に生きて漫画を描けたこと』に安堵し、朝は『目が覚めたこと』に感謝するんです」
また朝が来る。「年に数回訪れる納得」のために、ちばてつやは目を覚まし、漫画を描きだすのだろう。
ちばてつや
1939年1月11日生まれ 東京都出身 1956年、貸本漫画でデビュー。少女漫画雑誌の連載を経て、少年漫画雑誌に活躍の場を移す。1968年に連載開始された『あしたのジョー』(原作・高森朝雄=梶原一騎)は単行本が累計発行部数2000万部の大ヒット。『おれは鉄兵』(1973年)、『あした天気になあれ』(1.81年)など、スポーツ漫画でヒットを連発
(週刊FLASH 2020年9月1日号)