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名曲散歩/さとう宗幸『青葉城恋唄』歌詞に「青葉城」がない理由

エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2020.08.30 16:00 最終更新日:2020.08.30 16:00

名曲散歩/さとう宗幸『青葉城恋唄』歌詞に「青葉城」がない理由

 

 東京・神田の古いビルの2階。そこには夜な夜な紳士淑女が集まり、うんちくを披露しあう歌謡曲バーがあるという。今宵も有線から、あの名曲が流れてきた。

 

お客さん:お、このイントロは、さとう宗幸の『青葉城恋唄』。杜の都・仙台の爽やかな夏が思い浮かぶ、清々しい曲だよね。

 

マスター:1978年、地方の時代と言われ始めた頃のヒット曲。ところで、この曲の作詞は星間船一という人なんだけど、知ってる?

 

 

お客さん:星間船一? はじめて聞く名前だなあ。

 

マスター:それもそもはず、この人はプロじゃないんだ。当時、地元ラジオ局のパーソナリティーだったさとう宗幸が、リスナーの作った歌詞に曲をつけて歌うコーナーから生まれたという。

 

お客さん:なるほど、星間さんはリスナーの一人だったのか。

 

マスター:さとう宗幸が歌詞を読んでいるうち、アタマのメロディーがすっと出てきて、5分もかからず完成したという。

 

お客さん:「杜の都・仙台」の名所や祭りが織り込まれたご当地ソングの決定版だよね。

 

マスター:「広瀬川」「七夕祭り」「青葉通り」とかね。ただ、この曲には肝心の「青葉城」が出てこないんだよね。

 

お客さん:確かに!

 

マスター:実は星間さんのもともとの歌詞には「青葉城仙台」と書かれていたんだって。ではクイズです。その部分をさとう宗幸は何と言い換えたでしょう?

 

お客さん:わかった!「杜の都」!

 

マスター:正解! 実は当時、「仙台=杜の都」とはそれほど認知されていなくて、朝日新聞のデータベースを見ても、この曲がヒットするまで「杜の都」は2回しか使われていなかった。ただ、1978年以降は急増するんだよね。

 

お客さん:「仙台=杜の都」を定着させたのは、さとう宗幸だったのか!

 

マスター:さとう宗幸は昔もいまも仙台を拠点に活動していて、宮城県民にとっては特別な存在なんだよね。

 

お客さん:『青葉城恋唄』、これは宮城県民にとっては、もはや県民歌なんだろうなあ。

 

 おっ、次の曲は……。

 

文/安野智彦
『グッド!モーニング』(テレビ朝日系)などを担当する放送作家。神田で「80年代酒場 部室」を開業中

 

参考:『朝日新聞』(2018年1月20日)/BS朝日『うたの旅人』(2008年5月31日)

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