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名曲散歩/狩人『あずさ2号』運命を引き寄せた「余ったテープ」
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2020.09.06 16:00 最終更新日:2020.09.06 16:00
東京・神田の古いビルの2階。そこには夜な夜な紳士淑女が集まり、うんちくを披露しあう歌謡曲バーがあるという。今宵も有線から、あの名曲が流れてきた。
お客さん:お、このイントロは、狩人の『あずさ2号』。力強くも哀しげで、なおかつ美しいハーモニーが印象的だよねえ。
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マスター:1977年、加藤久仁彦と高道による兄弟デュオのデビュー曲がいきなりヒットした。
お客さん:ところで、なぜユニット名が「狩人」なの?
マスター:2人を見出した作曲家の都倉俊一が「いつまでも大ヒットを狙うハンター(狩人)であれ」という願いを込めてつけたという。
お客さん:都倉俊一は『あずさ2号』を作曲したよね。
マスター:そう、実は都倉俊一と加藤兄弟との出会いは本当にたまたまだったそうだよ。ディレクターが、ある新人女性歌手の歌を書いてもらおうと、都倉俊一にテープを送ったんだ。
お客さん:ふんふん。
マスター:そのテープが少し余ったから、ついでに加藤兄弟の歌を入れたところ、都倉俊一は「ぜひこの兄弟の歌を書かせてほしい」と申し出たんだって。
お客さん:じゃあ、もしテープが余らなかったら、2人は世に出ていなかったんだ!
マスター:そう。そして完成したのが『あずさ2号』、この年のレコード大賞新人賞を受賞し、『紅白歌合戦』初出場も果たした。
お客さん:運命だなあ。
マスター:その後、2人には不仲説も流れ、2007年に解散したけど、2011年に復活して、いまも『あずさ2号』を歌い続けている。
お客さん:そりゃ兄弟だからケンカもするよね。
おっ、次の曲は……。
文/安野智彦
『グッド!モーニング』(テレビ朝日系)などを担当する放送作家。神田で「80年代酒場 部室」を開業中
参考:塩沢実信『昭和の歌手100列伝 part2』(北辰堂出版)/BS12『スナック 胸キュン1000%』(2020年8月16日)