芸能界に、未練はなかった。一方、3歳下の瑛太は2001年、10歳下の絢斗は2007年に俳優デビュー。ともに日本を代表する俳優になっていった。
「運転手の仕事は自分に合っていました。業務内容は電化製品の配送。職場で、『2人の兄だ』と自分から言うことはありませんでしたが、何度か『瑛太に似てるね』と言われたことはありますね(笑)。
弟たちが役者として華々しく活躍していくのを見ていましたが、ひとりのファンとして応援していました。ちょうどそのとき、僕は写真を撮ることに熱中していて、『自分は “撮る側” として、表現に関わっていければいいんだ』と思っていました。運転する4tトラックの助手席には、いつもカメラがありました」
そんな竜弥に2018年、40歳を前にして、ある転機が訪れた。
「劇団をやっている友人にばったり会って、舞台に誘われたんです(2018年「劇團有機座」公演)。僕は人見知りですし、舞台に対して苦手意識があったので、『イヤだな』と思いました(笑)。
でも、年齢的にもいまが最後のチャンスかなと思い、出てみたら、めちゃくちゃおもしろかったんです。本当にやってよかった。もうやめず、このまま死ぬまで俳優を続けようと強く思いました」
朗読劇にも挑戦するうち、現在の事務所と巡り合った。2020年1月には、テレビドラマ『病室で念仏を唱えないでください』(TBS系)の第1話に出演を果たす。
「伊藤英明さんが主演の医療ドラマで、入院患者役を演じました。原作マンガを読んで、台本を読み込んでいきました。堀内健さん(ネプチューン)とやりとりさせていただくことが多い役柄で、緊張しましたね。本番では夢中で、まったく余裕はなかったのですが、瑛太からは『よかったよ』とLINEが来ました」
時を同じくして1月、瑛太も竜弥の再デビューに合わせたかのように、芸名を本名の「永山瑛太」に改名した。
「それは、たまたまだと思いますよ(笑)。でも、これで芸能界に『永山』という役者が、同時期に3人はいることになるわけですよね。長男であることのプレッシャーは、もちろんあります。でも、瑛太はもちろん、絢斗もーー10歳年下で、ふだんは、ただ『かわいい』だけの存在ですが(笑)ーー役者としての実績は僕より遥かに上です。2人のキャリアに今から追いつけるとは思ってもいません」
コロナ禍で、決まっていたいくつかの仕事が延期や中止になった。それでも竜弥は、自分のペースを大事にして、ひとつひとつの仕事に取り組んでいきたいと力を込める。
「僕は回り道をして、この年齢でまたデビューするわけですが、これまで違う世界で経験してきたことも、無駄ではないんじゃないかなと思うんです。これからは、『永山』と聞いて、僕の名前も挙がるようになればいいなと思います」
ながやまたつや
1979年生まれ 東京都出身 2003年映画デビュー。写真家、舞台俳優として活動後、俳優活動を休止。2020年に再デビューした
写真・保坂駱駝
取材協力・BAR CUT(東京都港区南青山)