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池田鉄洋、25年愛する煮込み定食が支えた「長き下積み時代」
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2020.09.12 11:00 最終更新日:2020.09.12 11:00
たとえわずかな出番でも、エキセントリックな芝居で観客や視聴者を釘づけにする。それが、池田鉄洋(49)の真骨頂だ。
穏やかな顔つきが、ときに魔人にも見える不思議。事実、ドラマ『アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋』(フジテレビ系)では、チームの和を乱す人物を怪演し、新境地を拓いた。
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8月上旬、その池田は三軒茶屋の「長崎」にいた。25年も通っているという。店主夫妻に菓子折りを渡し、さらに深々とお辞儀。そこへ、「『悪魔の毒毒モンスター』、拝見しましたよ」と女将が声をかけた。池田が3月に演出を手がけた舞台だ。
「奇跡的に外出自粛期間の前で、東京公演ができたんです。1980年代のアメリカのB級カルト映画のミュージカル版で、ジャニーズ事務所のユニット『ふぉ~ゆ~』の福田悠太君が主演。『野性爆弾』のくっきー!さんが怪物のマスクをデザインしてくれて、これが素晴らしい出来でした。
僕は演出や脚本を担当する際、名前を『テツヒロ』とカタカナ表記にしますが、『俳優の自分に邪魔されないよう、別キャラを作ったほうがいい』と判断してのことです」
池田は演出もして脚本も書き、ひとり何役もこなす “魔法使い”。小劇場演劇出身だが、劇団内のユニット芝居を通じ、次第に注目された。やがて、ドラマ『TRICK』(テレビ朝日系)などで強烈なキャラの脇役を演じ、一気にブレイクを果たした。しかし、下積みは長かった。
「僕は、もうじき50歳になるんですけど、國學院大學に入り、学内で結成された劇団『猫のホテル』に参加したのが1993年。『TRICK』への出演が2005年なので、それまで舞台中心の生活でした。
ガードマンや清掃のバイトを終えると、稽古場に駆けつける毎日。食事も、ご飯を炊いて納豆をかけるぐらいで、それが週7日のうち6日でした。それでも週に1度は、長崎さんに寄るのを楽しみにしてました」
「長崎」はちゃんぽん屋だが、同じスープで仕込む煮込みが名物。新鮮なモツがトロトロになるまで煮込まれ、ぶつ切りのゴボウやコンニャクの香りや食感も相まって、えも言われぬ旨味を醸し出す。
「煮詰まってくると、スープが目の前で継ぎ足されるんです。いまは多少贅沢して、半シューマイと半チャーハンとセットの『トリプル』をおもに注文するんですが、当時は煮込み定食ばかり食べていました。
マンガ盛りの飯に、ラーメン鉢になみなみ入ったスープもついてくる。『これで一週間乗り切るんだ』と、自己暗示をかけていましたね(笑)」
大学も夜間コースに通い、風呂なし共同トイレの家賃2万5000円のアパートに住んでいた。銭湯が終わる時間も計算に入れねばならない。だから、「いつも貧乏暇なし」。銭湯に行けない日は、半畳ほどの流しで、頭からそのままシャンプーで体を洗う日常。長崎の煮込みが、「自分へのご褒美」だった。
バイト終わりに飯をかっ込み、火傷しそうな口内を漬け物で冷やした。当時は「ひたすら、ここでエネルギー補充していた」と、池田はビールのグラスを手に笑う。
「シューマイも美味しいんですよね。それをつまみに飲みたくもなるけど、昔はそんな余裕もなかった。今も、もっぱら昼に来るかな。腹ペコのときにね。
昼から夜までの通し営業で(9席の)カウンターのみ。お客さんも入れ替わり立ち替わりに来るので、ゆったりしてたら申し訳ない。だから、ここでインタビューなんて、すごく贅沢な時間を過ごさせてもらってますよ」