エンタメ・アイドル
名曲散歩/本田美奈子『1986年のマリリン』幻の少女隊メンバー
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2020.09.27 16:00 最終更新日:2020.09.27 16:00
東京・神田の古いビルの2階。そこには夜な夜な紳士淑女が集まり、うんちくを披露しあう歌謡曲バーがあるという。今宵も有線から、あの名曲が流れてきた。
お客さん:お、このイントロは、本田美奈子の『1986年のマリリン』。歌はうまいし、可愛いし、とにかくへそ出しルックがセクシーだったよね。
【関連記事:名曲散歩/『センチメンタル・ジャーニー』松本伊代のキャッチフレーズは…】
マスター:この曲の前に出した『Temptation(誘惑)』があと一歩のところで10位以内に入らなかったんだ。「個性が足りない」と痛感した本人が「へそ出し」衣装を発案し、マドンナのビデオで研究して腰ふりを取り入れたという。
お客さん:セルフプロデュースだったのか、インパクトが抜群だったよ!
マスター:その結果、『ザ・ベストテン』では最高順位2位につけ、このあともヒットを連発していくんだ。
お客さん:ほかのアイドルとは違ってアーティスト志向だったよね。
マスター:そう、インタビューでは「私は歌手です」って言っていた。そんな本田美奈子なんだけど、実は松本明子に負けたことがあるって知ってる?
お客さん:『♂×♀×kiss』でおなじみの松本明子に!?
マスター:実は中学時代、本田美奈子は『スター誕生』(日本テレビ)に出場している。527人の難関を勝ち抜いて決戦大会に出たんだ。そのときのメンバーが松本明子、徳永英明、そして本田美奈子だった。
お客さん:まさか……。
マスター:そう、プロダクションからのプラカードが上がったのは松本明子だけだった。
お客さん:逃した魚は大きかったねえ!
マスター:ただ、これだけの才能を芸能界は放っておかないよね。高校1年生のときに原宿でスカウトされるんだ。その事務所では、ちょうど少女隊のメンバーを選考中で、そのうちの一人としてスカウトされたという。
お客さん:ってことは、幻の少女隊メンバーってことか!
マスター:本田美奈子はその選考オーディションで『天城越え』を歌ったという。そしたら、逆に歌唱力の高さが評価されて、1人でデビューすることになったんだって。
お客さん:その歌唱力はのちにミュージカルで生きることになるんだよね。
マスター:そう、『ミス・サイゴン』『屋根の上のバイオリン弾き』『王様と私』『レ・ミゼラブル』といった名作に次々と出演し、存在感を発揮した。ただ、ご存知の通り、2005年、急性骨髄性白血病を患い、38歳の若さで逝ってしまった。本当に残念だった。
マスター:もしご存命なら53歳か。どんな活躍を見せてくれたのかな……。
おっ、次の曲は……。
文/安野智彦
『グッド!モーニング』(テレビ朝日系)などを担当する放送作家。神田で「80年代酒場 部室」を開業中
参考:『天に響く歌 歌姫・本田美奈子.の人生』(ワニブックス)/『ザ・ベストテン 蘇る!80'sポップスHITヒストリー』(角川インタラクティブ・メディア)