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社会学者が解説 「NiziUは日本的なアイドルだった!」
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2020.10.01 11:00 最終更新日:2020.10.01 11:00
日韓共同の「Nizi Project」から生まれた9人組ガールズグループ、NiziU。オーディションの様子はHuluで放送され、11月に予定される正式デビューを前に、若い女性を中心に大ブームとなっている。
韓国人プロデューサーのJ.Y. Parkに選ばれ、韓国の芸能事務所に所属する彼女たち。だがじつは、非常に「日本的」なオーディションによって選ばれていると、社会学者(テレビ論)でメディアと文化について研究する太田省一氏は解説する。
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「韓国のオーディション番組では近年、『国民プロデューサーシステム』という、視聴者の投票が大きく反映されるスタイルがトレンドです。今年デビューしたJO1はそうです。ですが『Nizi Project』の場合は国民プロデューサーシステムではなく、J.Y. Parkがオーディションするかたちでした。ですからむしろ、NiziUはモーニング娘。と似ているんです。どちらもプロデューサーのキャラが立っていますよね。つんく♂やJ.Y. Parkっていう魅力的な個性の人がオーディションする様子を放送するというシステムです」
日本の伝統的なオーディションに近い形だ。
「日本のアイドルオーディションは、70年代の『スター誕生!』に始まり、80年代の『夕やけニャンニャン』、90年代の『ASAYAN』と、公開でオーディションを見せてきた歴史があるんです。しかし最近の、AKBグループや坂道シリーズのオーディションはクローズドでした。『Nizi Project』は久々の公開オーディション番組で、日本で歓迎された側面もあると思います。韓国のアイドルは、BTSに代表されるように欧米流のプロフェッショナルなダンスや歌が特徴です。ショービジネスとして、最初から完成度を求める。一方で日本のアイドルは、パフォーマンスを含め未完成なことが多い。これは日本人のファンがアイドルの成長過程に楽しみを見出しているからで、オーディション番組が好きなのも成長の過程が見られるからでしょう」
モー娘。は地上波の『ASAYAN』、NiziUはネット配信の『Nizi Project』という番組から誕生した。
「それを補完したのが、朝の情報番組『スッキリ』で毎日のように途中経過を放送したことです。主婦層などへのアピールになったと思います。加藤浩次や近藤春菜、水卜麻美アナが、『ASAYAN』でのナイナイの役割を担っていただけでなく、SNSで応援するファンの気持ちをうまく代弁していました。その結果、ネットとテレビの相乗効果が生まれ、盛り上がりが加速したと思います。ネットを見てSNSで彼女たちを応援していた人は、『スッキリ!』で取り上げられているのを見て、『やっぱりおもしろいんだ』という確認ができます。いっぽうでテレビは、ネットの拡散力を利用して番組の宣伝をするわけです。そういう意味でも、NiziUはいまの時代にハマったアイドルだと思います」
おおたしょういち
1960年生まれ 富山県出身 社会学者・文筆家。東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得満期退学。テレビと戦後日本の関係が研究および著述のメインテーマ。それを踏まえ、現在はテレビ番組の歴史、お笑い、アイドル、ネット動画などメディアと文化に関わる諸事象について執筆活動を続けている。