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名曲散歩/テレサ・テン『時の流れに身をまかせ』 歌に生きる決意が

エンタメ・アイドル 投稿日:2020.10.04 16:00FLASH編集部

名曲散歩/テレサ・テン『時の流れに身をまかせ』 歌に生きる決意が

 

 東京・神田の古いビルの2階。そこには夜な夜な紳士淑女が集まり、うんちくを披露しあう歌謡曲バーがあるという。今宵も有線から、あの名曲が流れてきた。

 

お客さん:お、このイントロは、テレサ・テンの『時の流れに身をまかせ』。「アジアの歌姫」ここにあり! つくづく上手いよねえ。

 

 

マスター:『つぐない』『愛人』に続き、1986年に発売された曲だね。作詞・荒木とよひさ、作曲・三木たかしによるテレサ・テン最大のヒット曲だ。実はこの頃、テレサ・テンは人生の選択を迫られていたという。

 

お客さん:人生の選択?

 

マスター:そう、この頃、テレサ・テンには将来を約束した婚約者がいたんだ。だけど、相手は歌手活動をやめるよう求めていたという。

 

お客さん:「私と仕事、どっちが大事なのよ!」ってやつだ。

 

マスター:テレサ・テンは悩んだ末、泣く泣く彼と別れ、歌手の道を選んだ。歌手として生きていくことを決意したのは、このときだという。

 

お客さん:なるほど。

 

マスター:作詞の荒木によると、歌詞には「結婚が最終地点じゃなくても、今の自分が輝いていればいい」という自立した女性の思いが込められているという。

 

お客さん:具体的にはどういうこと?

 

マスター:歌詞に出てくる「あなた」は、テレサ・テンが人生をかける覚悟を決めた「歌」そのものだと。歌詞に出てくるフレーズの「あなた」を「歌」に置き換えたら、テレサ・テンの決意がわかるという。

 

お客さん:「もしも“あなた”と会えずにいたら」が「もしも“歌”と会えずにいたら」か。そして「いまは“あなた”しか愛せない」が「いまは“歌”しか愛せない」だね。

 

マスター:歌に人生をかけたテレサ・テンだけど、『時の流れに身をまかせ』の発売から10年もたたない1995年、42歳の若さで旅立ってしまった。

 

お客さん:あの歌声で、まだまだたくさんの曲を聞きたかったなあ。

 

 おっ、次の曲は……。

 

文/安野智彦
『グッド!モーニング』(テレビ朝日系)などを担当する放送作家。神田で「80年代酒場 部室」を開業中

 

参考:NHK BSプレミアム『テレサ・テン 歌声は永遠に』(2020年8月22日)/平野久美子『テレサ・テンが見た夢~華人歌星伝説』(ちくま文庫)

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