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平田満『蒲田行進曲』ブレイクも…「他人まかせのツケ」に葛藤

エンタメ・アイドル 投稿日:2020.10.12 16:00FLASH編集部

平田満『蒲田行進曲』ブレイクも…「他人まかせのツケ」に葛藤

20代のころ、劇団「つかこうへい事務所」の舞台

 

 そんな平田の名を全国に知らしめたのが、1982年に公開された映画『蒲田行進曲』だ。つかさんの舞台の代表作のひとつの映画化で、平田は風間杜夫演じるスター俳優の「銀ちゃん」を心底慕う、大部屋俳優の「ヤス」に大抜擢。

 

 クライマックスで、10mの階段から転げ落ちる “階段落ち” は、あまりにも有名だ。この熱演で、第6回日本アカデミー賞では、最優秀主演男優賞と新人俳優賞を受賞する。

 

「いまだに本当に感謝していますが、当時は『次は映画? へぇ~』って感じでした(笑)。つかさんのお芝居をするようになって、自分の “よすが(頼み)” ができて、『まがりなりにも役者として食べていけるんだ……』みたいなね。

 

 つかさん自身が、“時代の寵児” みたいになったので、僕らも映像の仕事が入ったりしました。『次は、こんなのがあるんだ』って、ディズニーランドの次から次へ世界が移っていく乗り物みたいな感じでしたね」

 

 その後は、映画にテレビドラマにと出演依頼が相次ぎ、人気俳優の仲間入りを果たした。だが、平田の心の中には、こんな思いがあった。

 

「つかさんから学んだことや、つかさんの芝居で培われたものしか、引出しがなかったわけですよね。自分の中のストックが、だんだんなくなっていく。自分の素養のなさとか、不甲斐なさみたいなね。『どこか監督や演出家に “あなたまかせ” だったツケが、まわってきたのかな……』って、思っていました」

 

 そう思い悩んで30代・40代を過ごし、60代となったいま、平田は「芝居をするのがおもしろい」と話す。

 

「いただいた仕事は全部大事だし嬉しいし、現場で全力を尽くします。でも、ホームグラウンドは舞台かなって気はします。かといって一年中、舞台に立っていたいというほどでは、ないですけどね(笑)。

 

 お相撲さんが土俵だったり、スポーツ選手がグラウンドだったりするように、最初が舞台だったせいか、『帰ってきたな』っていう気持ちがあって。舞台は、自分が自分に勝負している感じかな。ある意味、人格をさらけ出している感じがするんですよね。

 

 つかさんの口癖で、『おまえがどう生きてきたかが、全部わかるんだよ。おまえの生き方が問題なんだよ』って。それが舞台の場合は、染みついているんですよね」

 

 新型コロナウイルスの影響で公演の自粛が続くなか、「雑遊」で上演する予定だった「アル☆カンパニー」の戯曲は、10月30日・31日の2日間、リーディング公演でおこなう。

 

「今日は、いつも使うお座敷にひとりきりで、ちょっと寂しいですね。1日も早く、ここで舞台の打ち上げで仲間たちと飲みたい。すっかり、酒は弱くなりましたけどね」

 

 そう笑う平田の手には、美味しそうに冷えた白穂乃香のグラスが。舞台と同じように「池林房」も、平田のホームグラウンドである。

 

ひらたみつる
1953年11月2日生まれ 愛知県出身 早稲田大学在学中につかこうへい氏と出会い、1974年に劇団「つかこうへい事務所」の旗揚げに参加。『熱海殺人事件』(1973年)、『蒲田行進曲』(1980年)など多くの作品に出演。映画『蒲田行進曲』(1982年)で、第6回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞などを受賞。その後も、多くの映画や舞台で活躍。映画『浅田家!』(10月2日公開)、『リトル・サブカル・ウォーズ~ヴィレヴァン!の逆襲~』(10月23日公開)に出演。10月30日・31日には「アル☆カンパニー」のリーディング公演を、新宿「雑遊」でおこなう

 

【SHOP DATA/池林房】
・住所/東京都新宿区新宿3-8-7吉川ビル1階
・営業時間/17:00~26:00(L.O.25:00)

 

(週刊FLASH 2020年10月13日号)

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