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名曲散歩/HOUND DOG『ff(フォルティシモ)』売れたらみんな手のひら返し
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2020.11.08 16:00 最終更新日:2020.11.08 16:00
東京・神田の古いビルの2階。そこには夜な夜な紳士淑女が集まり、うんちくを披露しあう歌謡曲バーがあるという。今宵も有線から、あの名曲が流れてきた。
お客さん:お、このイントロは、HOUND DOGの『ff(フォルティシモ)』。カップヌードルが食べたくなるよなあ。
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マスター:1985年、日清カップヌードルのCMソングに起用され、大ヒットしたんだよね。
お客さん:HOUND DOGも、この歌で一気にブレイクしたよね!
マスター:そうそう。ただ、大友康平いわく、ホントはこれより前にブレイクするチャンスがあったという。それは1982年のこと。『浮気な、パレット・キャット』が化粧品のCMソングに起用されたときだ。
お客さん:あの頃は化粧品会社のCMソングが売れたよね。
マスター:そう。カネボウが『浮気な、パレット・キャット』で勝負をかけたところ、資生堂が『い・け・な・いルージュマジック』(坂本龍一&忌野清志郎)、コーセーが『色つきの女でいてくれよ』(ザ・タイガース)をぶつけてきた。
お客さん:『浮気な、パレット・キャット』は埋もれちゃったか……。
マスター:そのあとも『涙のBirthday』『STILL!』などいい曲を出したけど、レコード会社が納得するような売れ行きにはならなかった。だから、当時のレコード会社からは肩たたき寸前だったという。
お客さん:その追い詰められたなかで『ff(フォルティシモ)』が生まれたんだね。
マスター:そう。売れた瞬間「俺はいけると思っていた」「俺は信じていた」とみんな手のひら返しだったそうだよ。そんな大友康平もいまや64歳だ。それでも元気満々、「ロックンロールは円熟しないこと、いつまでも青臭く、生意気な小僧のままでいること」と語っているよ。
お客さん:かっこよすぎる! 見習いたい生き方だね。
おっ、次の曲は……。
文/安野智彦
『グッド!モーニング』(テレビ朝日系)などを担当する放送作家。神田で「80年代酒場 部室」を開業中
参考:TBSラジオ『伊集院光とらじおと』(2020年8月24日)/速水健朗『タイアップの歌謡史』(洋泉社)