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名曲散歩/石川さゆり『津軽海峡・冬景色』発売当時18歳、アイドルやめて大ブレイク
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2020.12.12 16:00 最終更新日:2020.12.12 16:00
東京・神田の古いビルの2階。そこには夜な夜な紳士淑女が集まり、うんちくを披露しあう歌謡曲バーがあるという。今宵も有線から、あの名曲が流れてきた。
お客さん:お、このイントロは石川さゆりの『津軽海峡・冬景色』。上野から青森までの走行距離700キロを、たった1行で表現した作詞家・阿久悠の凄み!
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マスター:石川さゆりは1973年、アイドルとしてデビューしたけど、しばらく伸び悩んだ。
お客さん:当時は、桜田淳子、森昌子、山口百恵の「花の中三トリオ」が大活躍していたからね、ちょっと出遅れたのかな。
マスター:転機が訪れたのはデビュー4年目のこと。作詞家・阿久悠と作曲家・三木たかしが担当することになり、1枚のアルバムを企画したんだ。
お客さん:LPレコードね。
マスター:それが1976年発売の『365日恋もよう』。日本各地を舞台に月ごとに12曲、『伊那の白梅』(1月)、『雪まつり』(2月)、『流しびな』(3月)と、恋をした少女が傷つきながら成長する姿を描くというコンセプトで、最後の12月が『津軽海峡・冬景色』だった。
お客さん:そのアルバムからシングルカットされた歌だったんだ!
マスター:これが石川さゆり最初のヒット曲となった。そして何より驚きなのは、当時、彼女はまだ18歳だったってこと!
お客さん:まだ人生経験が少ない18歳で、あの世界観を、あの迫力で歌い上げるのは神がかっているよね。
マスター:ところで青森港には『津軽海峡・冬景色』の歌碑があるのは有名だけど、実はもう一つ歌碑があるのを知ってる?
お客さん:どこに?
マスター:青森県の旧・三厩村、現在の外ヶ浜町というところに立派な歌碑があるんだ。実はここ、2番の歌詞に出てくる竜飛岬がある村なんだ。
お客さん:なるほど!
マスター:この歌碑は2番の歌詞が一番大きくて、ボタンを押すと2番の歌しか流れないという。
お客さん:三厩村のプライドだね。青函連絡船も夜行列車もなくなったけど、歌っていうのは残るんだねえ。おっ、次の曲は……。
文/安野智彦
『グッド!モーニング』(テレビ朝日系)などを担当する放送作家。神田で「80年代酒場 部室」を開業中
参考:BSテレ東『ふたつの歌魂 作詞家 阿久悠×作曲家 三木たかし(2019年12月12日)/阿久悠『愛すべき名歌たち』(岩波書店)