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久住昌之、己の勘だけで店に入る「ジャケ食い」三番勝負

エンタメ・アイドル 投稿日:2021.01.02 16:00FLASH編集部

久住昌之、己の勘だけで店に入る「ジャケ食い」三番勝負

久住昌之さん

 

 漫画家久住昌之さんの新刊エッセイ『面食い(=ジャケぐい)』が発売された。「ジャケ食い」とは久住さんの造語で、自分の勘だけを頼りに飲食店に入ること。もちろん、ジャケットの面構えだけを頼りに、未知のアーティストのLP盤を買うところに源流がある。

 

「10代20代の頃はバンド活動にドップリはまっていて、1曲でも多く自分の知らない曲を聴きたかったけど、当時はまだネットの音楽配信もYouTubeもなく、知らないアーティストの曲を聴くにはレコードを買うしかなかった。

 

 

 あのころ、LP1枚の値段は約2000円。手持ちのお金が常に乏しかったので、はずすわけにはいかない。そこで、毎回、ジャケットの裏表を穴の開くほど見つめた末の『ジャケ買い』をしていたんですね。旅行や仕事で訪ねた先で、知らない飲食店に入るときも、それと同じ感覚で、毎回『勝負!』の気持ちで店の前に立つわけです」

 

 久住さんはグルメサイトなどの情報を一切チェックせず、店のたたずまいだけで暖簾をくぐるかどうかを決める。

 

「新しい店に行くならネットで必ず評判を調べてからという若い世代の人たちにとって、丸腰で見知らぬ店に飛び込むのは『怖い』と感じることもあるでしょう。僕だって、いまだにしょっちゅう怖いと感じているしね。

 

 でも、自分の頭で考えて、自分の勘をフルに活用して判断して、初めて自分の好みの店を見つける能力が磨かれる」

 

 うん、カッコいい。だが、それでいざ店に入って「むむむ……」と、後悔することはなかったのだろうか。

 

「もちろんありますよ。長い歴史の中では、明らかにヤバい雰囲気の人ばかりが集まっている店とか、開けたらお店の人が眠っていたとか(笑)」

 

 数多くの『面食い』の積み重ねのなかから、忘れがたい「珠玉の難勝負」について語っていただいた。

 

●失敗が小さく小さく逆転していく店

 

「熊本駅の近くで、古びた暖簾が下がり、いかにも長年、地元に根付くシブい小料理屋を見つけた、と思った。それがいざ店の中に入ってみたら、想像と違ってどう見ても改装したてのように煌々と明るくてピカピカ。おまけに、50インチはありそうな大画面のテレビが壁にかかっていて、バラエティ番組が大音響で流れている。


 客は僕とサラリーマン風の男性の2人だけ。“シブさゼロ” で、まったく落ち着けない。とりあえず1杯だけ飲んで退散しようとしたけれど、そういうときに限って、出てきたビールは大瓶(笑)。第一印象は完全に勝負に負けたな、と」

 

 ところが、悲しい気持ちでビールのあてに馬ひもを注文したところ、これが存外美味だった。落ち着いて品書きを見れば、焼酎だけでなく地元の日本酒もなかなかの品揃えで、頼んだ酒がまた美味しく、あてをもう一品、もう一杯……。

 

 店を出る頃にはすっかりいい気分に。黒から白へ、オセロの駒がバラバラっとひっくり返されるような面白い経験だったそうだ。

 

●廃業銭湯向かいの泣ける店

 

 東京・西武新宿線の武蔵関駅前商店街にある居酒屋でも、最初は痛恨の負け戦を経験。

 

「引き戸が磨りガラスで中が見えなくて、なんとも入りづらかったんですよ。でも、銭湯の向かいだし、『大衆酒造 お食事処』という看板にも惹かれて勝負したんだけど、ガラッと戸を開けて入った瞬間の “よそ者感” が強烈で。

 

 店主を始め、カウンターや奥の座敷で飲んでいた常連客全員に、すごい圧力で “じろっ” と注目されちゃって。いくつになっても、あの “じろっ” は本当に苦手。いたたまれない気分でしたね」

 

 しかし、注文した「もろきうり」をはじめとして、どの料理も驚くほど安く家庭的でおいしく、これは近所に根付いたよい店じゃないかと気づき始める。日を改めて訪問したときに食べた「チキンライス」は、思い出に訴えかけるような味だった……。

 

●カウンター鼻笛地獄の店

 

 とどめは、困惑の体験をした三重県・四日市市の小料理の店。「田舎料理」の看板に偽りはなく、おいしい松茸の土瓶蒸しやもずく酢などをツマミにカウンターで日本酒をチビチビやっていたところまではよかったのだが……。「音楽をやっている人間」だとわかった途端、店主が「鼻笛って、ご存じですか?」と尋ねてきた。

 

「鼻笛? いや、知りませんって答えたら、店の奥から、小さな板に穴が2つ空いたものを持ってきて、『そこに鼻の穴をつけて、鼻息を吹き込んでみてください』って言うんだよね。

 

 カウンターに座って両脇を他のお客さんに挟まれているのに、その状態で “ピ~” っていう情けない音を立てて、鼻笛を吹かされる羽目になっちゃって。

 

 しかも、『さすがミュージシャン! 一発で音が鳴りましたね』って、さらに店の奥から20個くらい、いろんな種類の鼻笛を出してきた。これを全部吹かされるのかと思ったら、生きた心地がしなくて。

 

 とりあえず、4つ吹いたところで、『これとこれを買います!』って、なんとかこの地獄を終わりにしてもらいました(笑)」

 

 それだけなら完全な負け勝負なのだが、やむなく買ってきた鼻笛は、今やライブのステージを大いに盛り上げる、欠かせないアイテムになっているというから、負けと勝ちは表裏一体なのかもしれない。

 

四日市の田舎料理の店で買った鼻笛。写真/角田慎太郎(Gran)

 

 久住さんは、たとえ「負け」の店に遭遇してしまっても、「この店はダメ」とすぐに切り捨てず、「どうしたら、傷を浅くできるだろう?」と、常に考えている。

 

「それにむしろ、負けた話のほうがみなさん笑ってくれますからね。どんな負け戦になったとしても、僕のような仕事をしている人間には決して無駄ではないんです(笑)」

 

 最近は、生活様式の変化もあって、ひとりメシが増えているそうだ。長年にわたり、北海道から九州まで足を運んだ45店で、静かに、可笑しみを含んで巻き起こったドラマの数々。場面を思い描いているうちに、久住さんに、『孤独のグルメ』井之頭五郎の姿がかさなった。(インタビュー/内山靖子)

 

●くすみ・まさゆき
1958年、東京都生まれ。1981年、原作を担当し「泉昌之」名義でマンガ家デビュー(作画は和泉晴紀)。その後、数多くの作品を発表。近年では、人気ドラマにもなった『孤独のグルメ』『花のズボラ飯』『食の軍師』などの原作も手がける。マンガ関連の仕事に加え、エッセイスト、ミュージシャン、切り絵師など、幅広いジャンルで活動している。

 

※『面食い』(ジャケ食い)発売中

 

※2021年1月8日夜8時より、目黒「蔦屋書店」で、スチャダラパーBoseさんとのオンラインイベント開催

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