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『さんかく窓の外側は夜』平手友梨奈、独自の演技法に森ガキ監督が驚く

エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2021.01.23 20:00 最終更新日:2021.01.23 20:00

『さんかく窓の外側は夜』平手友梨奈、独自の演技法に森ガキ監督が驚く

平手友梨奈

 

 2011年「このマンガがすごい! 2011オンナ編」で1位・2位を独占するなど、話題の漫画家・ヤマシタトモコによるベストセラーコミックス『さんかく窓の外側は夜』が実写映画化され、1月22日より公開された。

 

 

 岡田将生と志尊淳がW主演を務め、平手友梨奈がヒロインを演じることで話題の同作について、森ガキ侑大監督に訊いた。

 

 同作は、霊が「祓える男」冷川(岡田将生)と「視える男」三角(志尊淳)のふたりが、連続殺人事件を発端にした呪いに立ち向かっていくミステリーエンターテインメント作品。森ガキ監督はどのようにしてこの作品の実写化に挑んだのだろうか。

 

「現在も連載中で9巻まである漫画を2時間の映画にしっかりとまとめるという作業が大変でしたね。3人の登場人物の特殊な能力を説明しつつ、3人の関係性の変化も2時間の中で見せていく。そこに破綻がないよう、注力しました。呪いや新興宗教といった存在に、どれだけリアリティを持たせられるかも大事でした」

 

 映画として「漫画とは違う映像ならではこだわり」も多々あった。

 

「原作漫画では、呪いが人を襲う様子が、そのまま画で描かれているのですが、そこの実写化には苦労しました。『現代の呪いは何か』を考え、SNSの誹謗中傷の言葉こそが現代の呪いだと思ったんです。言葉をそのまま呪いとして映像に活かすという独自の表現には力を入れました」

 

 呪いだけでなく、幽霊の映像表現も、これまでのホラー映画とは一線を画している。

 

「自分なりに新しい幽霊や呪いの見せ方が本作では重要になってくると思ったんです。普通の幽霊描写をしても、いわゆるJホラーの巨匠たちには勝てません。

 

『幽霊より人間の方がよっぽど怖い』というフレーズが原作にあるのですが、僕にとってもまさにその通りで、人間の欲の方が怖い。人間のほうが幽霊よりも、黒くてドロドロしていると思うんです。

 

 そこで、欲望のある人間を黒色で表現し、浄化されている幽霊を白のイメージで表現しました。呪い部屋の周りは赤、宗教施設は紫など、全編のイメージカラーにはこだわりましたね」

 

 監督がこう語るように、本作の登場人物は通行人まで黒のトーンが多く、幽霊は白い姿で表現されている。

 

 こだわりは人間や幽霊の描写や色だけでない。カルト教団内部の様子や、連続殺人事件の描写など、メジャー作品ではなかなか見られないようなショッキングなビジュアル表現が多い。

 

「『メジャー作品だからそれは見せないだろう』というストッパーが自分の中にもあったのですが、そこに踏みこまないと面白い映画は作れないので、思いっきりやりました」

 

 主人公たちが除霊するシーンや、呪いの部屋なども、斬新なビジュアルで映像化されている。

 

「主人公の2人の除霊時に登場する三角形のスペースや、呪いの部屋の触手のような表現は、ファッションショーなどで見られる前衛的なビジュアルを参考にしました。三角形の吹き抜け螺旋階段など、象徴的なビジュアルにもこだわりましたね」

 

主人公の冷川と三角の“”距離感”も物語の鍵に

 

主演の岡田将生と志尊淳は、不思議なバディ感を漂わせている。

 

「原作にもある、2人の中性的な雰囲気や関係性を表現できればと考えていました。除霊中、三角形の中にいるときは、お互いに腹を割り通じ合っていますが、その状態から抜けた瞬間に赤の他人になってしまう。

 

 でもその空間で感じた温もりや感覚がずっと残っているから決して離れられない。そういったふたりの距離感は大切に見せたいと思っていました」

 

 主人公2人に対峙する “呪いを操る” 女子高生・非浦英莉可を演じた平手友梨奈の印象を、森ガキ監督はこう語る。

 

「原作を読んでいるときから、英莉可役には平手さんしかいないと思っていました。演出してみて、彼女はすごく面白かったですね。芝居に対して、彼女なりの独自の向き合い方があって、それが非常に新鮮でした」

 

 平手は普通の女優とはまったく違うアプローチをしたという。

 

「これは彼女自身から提案してきたスタイルなのですが、彼女は自分の登場シーンしか台本を読まないで演技に臨んでいます。登場人物は、(その人物が登場しない)他のシーンのことを知らないはずだから、その方がリアルな表現ができるということでした。そのアプローチで全編演じていたので、そこには驚かされましたね。今回はそれがいい方向に出たと思います。

 

 もちろん、女優として作品を重ねていくなかで、いつか彼女のスタイルが壁にぶち当たるときも来るかもしれません。ただ、彼女はまだ映画2作目で19歳と若いので、今は彼女なりのやり方で行ってほしい。予定調和じゃない女優さんとして、成長していく姿を期待しています」

 

「(平手には)監督としてまったくストレスを感じなかった」(森ガキ監督)

 

 森ガキ監督に、平手の印象的な撮影エピソードを訊いた。

 

「彼女は集中力と忍耐力がとにかくすごいです。呪いの部屋の撮影で、平手さんが体を黒い触手でぐるぐる巻きにされた状態で倒れ、口に触手が入っていくという場面がありました。

 

 触手のCG作成のため型を取らなければならなかったので、口にマウスピースを咥えたまま、その体勢を長時間維持しなければならなかったんです。真冬に薄着の撮影で、大変寒かったのですが、顔色ひとつ変えずに対応していました」

 

 同じキャストでシリーズの続編もありえるのだろうか。

 

「この作品のヒット次第だと思うのですが、僕のなかではすべてやり切ったので、仮にシリーズ化されたとしても、現時点で続編を手掛けるつもりはありません」

 

 デビュー作『おじいちゃん、死んじゃったって。』では親族の葬式を題材に家族の姿を描いた森ガキ監督。今作では、まったく違う作風のエンタメ作品を手掛けた。

 

「エンタメ、商業芸術という意味で、ホラー映画やサスペンス映画には挑戦したかったんです。僕自身の監督としての振れ幅の広さを見せたいという気持ちもありました。

 

 そういう部分は、達成できたと思っています。広告と違い、映画は全部ダイレクトに結果が監督に圧しかかってくるので、プレッシャーが全然違います。

 

 自分の感性をモロに切り売りするような部分もありハードなのですが、そこが喜びでもあるので、これからも映画を撮っていきたいですね」

 

※映画『さんかく窓の外側は夜』 全国公開中(配給/松竹)
※写真(C)2021映画「さんかく窓の外側は夜」製作委員会/(C)Tomoko Yamashita/libre

 

もりがきゆきひろ
1983年生まれ。広島県出身 CM監督として資生堂やANA、アフラック、ソフトバンク、日清食品のカップヌードルなど、多数の作品を手掛ける。2018年『おじいちゃん、死んじゃったって。』で長編映画監督デビュー

 

「グランブルーファンタジー」「日清カップヌードル」などのCMでも話題を呼んだ

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