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森七菜の“移籍騒動”に疑問「引き抜き禁止」芸能界の鉄則は消えたのか?

エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2021.01.31 06:00 最終更新日:2021.01.31 08:17

森七菜の“移籍騒動”に疑問「引き抜き禁止」芸能界の鉄則は消えたのか?

 

 2020年の「ブレイク女優ランキング」首位に輝き、今もっとも注目を集めている若手女優・森七菜(19)。“騒動” を経て、前所属事務所との契約を解除し、1月24日にはソニー・ミュージックアーティスツ(SMA)と業務提携することが発表された。

 

 

 騒動のあらましは、こうだ。1月14日、森のインスタグラム公式アカウントが削除され、所属事務所ARBRE(アーブル)の公式サイトからも写真が削除された。翌日にはスポーツ紙で、SMAへの移籍が報じられ、さまざまな憶測を呼んだ。

 

 世間やマスコミからの注目度の高さが、この “移籍騒動” の異例ぶりを物語っている。あるスポーツ紙記者は、こう語る。

 

「通常は、事務所を辞めるより前に、独立することや移籍先の名前が発表されるものです。森さんのように、何の発表もないまま、先にHPから削除されるのは、異例の事態。前の事務所が “引き抜き” に激怒し、意趣返しをしたとしか思えない展開です。

 

 最近、大手芸能事務所からのタレントの “独立” “移籍” が多発していますが、もし “引き抜き” となると、話は別。芸能界には、『引き抜きはご法度』という不文律があります。今回は、段取りを見てもスムーズな移籍とはいえなかったため、引き抜きを疑う声があがりました。

 

 さらに数日とはいえ、こんな “売れっ子女優” が、所属が宙に浮いたまま活動を続けていたというのは、非常に珍しいケースなんです」

 

 芸能界では昔から、移籍に際した「引き抜き」「独立」が問題になり、時代ごとにさまざまな策が講じられてきた。ある芸能ジャーナリストが解説する。

 

「少し前にお茶の間を騒がせた、眞鍋かをりや小倉優子のケースのように、移籍をめぐるトラブルが表面化するのは、氷山の一角です。タレント・事務所ともに仕事に支障をきたすのを恐れて、表沙汰にならないケースもたくさんあります。

 

 じつはこうした問題は、近年に始まったことではありません。現在の芸能界の “土台” はどこかと遡れば、1953年に松竹、東宝、大映、新東宝、東映の大手映画五社間で締結した『五社協定』で築かれたものです。

 

 五社協定とは、映画会社同士が所属俳優の引き抜きを禁じ、違反者には罰則を科する決まりです。協定以前にあった、俳優の活発な移籍と、それにともなう出演料の高騰による、映画会社の収益圧迫を防ぐための措置でした。一方で当時、映画製作を中止していた日活が、再開する計画をしていたことに、五社が対抗策を講じたという一面もあります。

 

 この五社協定により、津川雅彦や山本富士子など、多くの俳優が映画界から干される目に合いました。1963年には、公正取引委員会が同協定に対し、独占禁止法違反の疑いがあるとして審査に乗り出しましたが、テレビの普及により映画会社の倒産が相次いだこと、映画会社側が問題の条項を削除したことから、不問となりました。そして1971年には、五社協定自体が自然消滅したのです」

 

 そして、現在の芸能界が形作られていく。

 

「五社協定後の芸能界を牽引したのが、渡辺晋・美佐夫妻が創業した渡辺プロダクションです。当時は、渡辺プロが業界のルールを決めていましたが、テレビを活動の軸とする芸能事務所に芸能界の実権が移ってからも、じつは五社協定のシステムが引き継がれていたんです。

 

 その当時も、タレントの引き抜きや独立で問題が生じていました。たとえば、こんなエピソードがあります。ある事務所に所属していた売れっ子歌手が突然、『外車を買ってくれないと仕事をしない』と事務所に要求したが、事務所側は応じなかった。すると後日、別のプロダクションが彼に車を買い与え、彼を引き抜いてしまったんです。

 

 こうした事態を未然に防ぐために、プロダクション同士が密に連絡を取り合う仕組みを作ろうと、晋氏が1963年に日本音楽事業者協会(音事協)という業界団体を組織し、主要な芸能事務所に加盟を呼びかけました。以来、音事協は、日本の芸能ビジネスの方針を決める役割を担っています」(同前)

 

 音事協設立の目的は、「タレントの引き抜きによる事務所間のトラブルの防止」や「著作権・肖像権などの権利確立」、「タレントの雇用環境の改善」。会長職は、大手芸能事務所の社長が交代で務める決まりがあり、現在の会長はホリプロ社長兼会長の堀義貴氏が務めている。ちなみに初代会長は、故・中曽根康弘氏が務めていた。

 

「芸能事務所は当時、『有料紹介事業』と見なされており、“人身売買” を連想させる負のイメージがありました。それを払拭するために音事協が中心となって契約書のシステムを整え、労働省(当時)と折衝を重ね、1986年4月に『芸能プロは人材派遣業ではない』と認められた経緯があります。

 

 その際に整えられた『統一契約書』の項目の中に『競業避止義務』が定められており、移籍や独立を考える芸能人への 抑止力になっていました」(同前)

 

 しかし2018年2月、公正取引委員会が、「芸能人などのフリーランスにも独占禁止法を適用する」との見解を出し、事態は一変した。その結果、タレントが円満に独立、移籍するケースが急増したのだ。

 

 では、森のケースはどうなのか。

 

「結論を言いますと、森七菜の移籍は『引き抜き』ではないと考えます。SMAは音事協の加盟社であり、同協会の規範に反することはできません。今でも『引き抜き』は御法度なのです。

 

 彼女のケースは報道された通り、『事務所と彼女の家族の揉めごとが原因の独立である』というのが、業界でも通説です。もちろん芸能界全体をみれば、近年も “引き抜き疑惑” はありましたが、今はタレント側の考え方も変わってきているため、トレンドは完全に『独立』なのです」(同前)

 

 芸能人の独立が急増したのは、公取委の見解以外にも理由がある。

 

「これまで芸能事務所が力を持っていた理由のひとつは、テレビ局のキャステイングの主導権を握っていたことにありました。大衆の前に出られる手段がテレビしかなかった時代には、大手事務所に所属してツテのある局に売り込んでもらうことが、売れるための近道だったのです。

 

 しかしコロナ禍もあり、テレビ出演だけでなく、ライブなどの公演や地方営業といった、事務所からもたらされる、それ以外の仕事も減りました。誰もがSNSやYouTubeなどで知名度を上げて稼げるようになっている時代性もあり、『仕事を取ってこれない事務所には所属している意味がない。新しいタイプの仕事や、好きな仕事をしたい』と、タレントたちが独立を検討するようになったんです。

 

 じつはタレントの独立傾向は、事務所側にもメリットがあります。たとえば、タレントが給料制の場合、仕事がなくても支払わなければならない “固定費” として人件費が経営を圧迫するため、出て行ってもらったほうが助かる、と思うこともあると聞きます。

 

 今後は独立が増えるだけだなく、タレント側が積極的にマネジメント能力のある事務所へ移籍するケースも増えるでしょう」(テレビ局関係者)

 

 森の移籍は、身内の揉めごとか、芸能界の構造変化の一端か――。まずは彼女の今後の動向に、注目しよう。

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