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長瀬智也『俺の家の話』「衝撃」という言葉が陳腐に思えるほどの予想外な最終回

エンタメ・アイドル 投稿日:2021.03.27 13:28FLASH編集部

長瀬智也『俺の家の話』「衝撃」という言葉が陳腐に思えるほどの予想外な最終回

 

※本コラムにはドラマ『俺の家の話』(TBS系)最終回のネタバレがあります。ご注意ください。

 

 筆者はこのコラムを書きながら、いまなお唖然・呆然としている。

 

 長瀬智也主演の介護がテーマのホームコメディドラマ『俺の家の話』が、大団円でフィナーレを迎えた……とはとても言いがたい最終回だったのだ。

 

 

 筆者は主演・長瀬×脚本・クドカン(宮藤官九郎)のドラマのファンだが、ごくごく個人的な意見を言わせていただくと、あんなラストは予想外も予想外だったし、あんな裏切られ方は期待もしていなかった。

 

 あえて繰り返すが、このコラムには本作の重大なネタバレが含まれている。未見の方で最終回の内容を知りたくない方は、本当に読まないことをおすすめする。

 

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 ではここからはネタバレありで、最終回について考察していくので、ご容赦いただきたい。

 

■父・寿三郎が死ぬ可能性は大いにあったが…想定外

 

 さっそく最大のネタバレをするが、長瀬演じる主人公・観山寿一がプロレスの試合中の事故で、死亡してしまうのである。

 

 本作は痴呆症を発症している能楽師の父・観山寿三郎(西田敏行)を介護することがテーマだが、明るく、温かく、いい意味でのほほんとした作風だった。ラストでその父が亡くなるという可能性は大いにあったが、それでもハッピーな雰囲気で終幕すると思っていた。

 

 父以外の誰かが死ぬなんて展開は予想もしていなかったし、ましてや長瀬演じる寿一が死ぬとは、筆者は本当に1mmも考えていなかった。

 

 寿一は介護ヘルパー・志田さくら(戸田恵梨香)との結婚を決意し、幸せにすると宣言していただけに、ホームコメディでその約束が果たされずに死亡するという展開は、普通であればありえない。2人の純愛が丁寧に描かれていたため、さくらに感情移入するといたたまれない。

 

 しかも、視聴者が寿一の死を知るまでの展開が、なかなかに残酷なのだ。

 

 最終回冒頭、前回(第9話)死の淵をさまよっていた寿三郎が奇跡的に回復し、寿一を含む家族たちが団欒しているシーンが描かれた。寿三郎は体調だけでなく、痴呆症の症状もよくなっているようで、はつらつとした笑顔を寿一に向ける。

 

 だが、実はこのときにはもう寿一は亡くなっており、寿三郎は幻に話しかけていたことが後に判明。寿一の姿は、寿三郎にしか見えないのだ。痴呆症はよくなっていたどころか、深刻化していたのかもしれない。上げて落とすという残酷すぎるミスリード……。

 

 寿一が最終回で舞うはずだった能楽作品『隅田川』は、我が子を探していた母親が、途中で子供がすでに亡くなっていたことを知るという悲劇。いま思えばその『隅田川』が伏線になっていたことがわかるが、気づけるはずもない。

 

 クドカン脚本のドラマ『木更津キャッツアイ』(2002年/TBS系)でも、続編の映画で主人公が若くして亡くなり、その死を父が看取るという展開が描かれていた。『俺の家の話』最終回は、『シックス・センス』と『木更津キャッツアイ』両作の要素を取り入れていたように感じた。

 

 さて、長瀬は3月いっぱいでジャニーズ退所&芸能界引退が決まっているので、当初から『俺の家の話』の続編が作られないことは既定路線。

 

 しかし、長瀬と盟友のクドカンならば、スペシャルドラマや映画といった続編の余地のある終わらせ方をするのではないかと密かに期待していた。

 

 長瀬とクドカンが初タッグを組んだ『池袋ウエストゲートパーク』(2000年/TBS系)も、連続ドラマから約3年後にスペシャルドラマとして復活したことも、そう思わせた一因である。ファンサービスの意味もあるし、万が一、長瀬が表舞台に帰ってきたいと思ったときの “帰る場所” 的な作品にするのではないかと……。

 

 けれどクドカンの脚本はまさにその期待の真逆で、続編の可能性を残さない、完全なる終わり。

 

 これは憶測だが、クドカンは芸能界引退という長瀬の強い意思を知っていたため、その気持ちを尊重した最終回にしたのではないだろうか。そんな穿った見方もしてしまう。

 

 いずれにしても、「衝撃」という言葉で表現するのが陳腐に思えるほど、想定外の最終回に度肝を抜かれたのだった。

 

●堺屋大地
恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『週刊女性PRIME』『日刊SPA!』などに寄稿中

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