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【坂本冬美のモゴモゴモゴ】デビュー曲が決まった瞬間、真っ先に頭に浮かんだ「うわっ、ダサい…」

エンタメ・アイドル 投稿日:2021.04.03 06:00FLASH編集部

【坂本冬美のモゴモゴモゴ】デビュー曲が決まった瞬間、真っ先に頭に浮かんだ「うわっ、ダサい…」

デビュー当時はキャンペーンのため全国のレコード店をまわったり、カラオケ大会のゲストとして歌うことが多かった

 

 坂本冬美が、歌手人生35年で生まれた「名曲」を語り尽くす、本誌連載がスタート。第1回のテーマは、1987年3月4日にリリースされたデビューシングル『あばれ太鼓』。

 

 

 皆様、初めまして。歌手の坂本冬美でございます。いよいよスタートいたします「坂本冬美のモゴモゴモゴ」(なんだか、意味不明なタイトルですが……)、記念すべき第1回のテーマは、わたしの大切なデビュー曲『あばれ太鼓』から、始まり、始まりです。

 

 

 えっ!? ご存じない? それでは、この機会に覚えてください。もぎたて演歌~いま・青春、超大型新人(苦笑)坂本冬美が歌う、『あばれ太鼓』『あばれ太鼓』、忘れないように、そぉ~れ、もう一丁、『あばれ太鼓』です。

 

 小学校5年生で、石川さゆりさんの『津軽海峡・冬景色』に出会い、18歳のときに、“これが最後のチャンス” とばかりに臨んだNHK『勝ち抜き歌謡天国』で優勝。

 

 なんとかデビューのきっかけを掴んだものの、その後、8カ月間は、森進一大先輩の『おふくろさん』を作曲された猪俣公章先生の内弟子……とは名ばかりで、朝は犬の散歩から始まり、炊事、洗濯、車の運転……。

 

 先生が銀座で飲んでいるあいだは車の中でじっと待機ですから、深夜2時、3時なんてことは当たり前。そんな、ほぼ付き人状態を経て、やっと掴んだデビューです。

 

 ちなみに、この年(1987年)のシングルランキング第1位は、瀬川瑛子さんの『命くれない』で、2位が中森明菜さんの『TANGO NOIR』、3位が吉幾三さんの『雪國』。諸先輩方がご活躍でしたね。

 

 わたしの同期は、のりピー(酒井法子)ちゃん、立花理佐ちゃん、森高千里さん……えっ!? ちょっと、待って。こ、こ、これは……。何かの冗談? 嘘ですよね? いただいた資料を見ると、桑田佳祐さまのソロデビューが、わ、わ、わたしのデビューと同じ年? そんな!? まさか? わたしを喜ばせるためのジョークですよね? えっ!? ホント……なの?

 

――本当です(というのは、天の声)。

 

 いやぁ、びっくりです。露ほども知りませんでした。ムフフ。やっぱり、桑田佳祐さまと、ご縁があったんですねぇ。顔がにやけてしまいます。いけない、いけない。ずいぶんと脱線してしまったので、話を『あばれ太鼓』に戻しましょう。

 

 今でこそ、『こんなに素敵な曲をありがとうございます』という、感謝の念に溢れていますが、当時、わたしは19歳。生意気盛りで、怖いもの知らず、世の中のことを何ひとつわかっていませんでした。8曲あった候補のなかから、「『あばれ太鼓』で行くぞ!」と言われた瞬間、真っ先に頭に浮かんだのが――。

 

「うわっ、ダサい…」

 

 石川さゆりさんのような女歌を歌いたいと思っていたわたしにとっては、ア然、ボー然、ガーンです。歌手にとって、デビュー曲というのは一生ついてまわるもの。この先、ずっと、“『あばれ太鼓』の坂本冬美” と呼ばれるのかと考えると、とても耐えられないなぁと(苦笑)。若気の至りですね。

 

 しかも、よせばいいのに、師匠であり、大作曲家でもある猪俣先生に…言っちゃったんです。「先生、これは流行らないと思います」という暴言を。モゴモゴモゴと、語尾を口の中に飲み込まず、キッパリと、ハッキリと!

 

 も、もちろん、わたしとしては、精いっぱい、遠回しに言ったつもりなんですが、これは、いけません。アウトです。ピク、ピク、ピク。先生の額に1本、2本、3本……青い筋が浮き――。

 

「バカやろう! 新人が流行るとか、流行らないとか言うのは、100年早い!」と一喝され、その瞬間、わたしの夢は、しゅるしゅると萎んでしまいました。

 

 あっ、でも、誤解しないでください。今はこの『あばれ太鼓』がデビュー曲でよかったと、心から思っているんですから。だって、見てください。このジャケット写真を。丸々と太っていてかわいいじゃないですか!? ですよね? 皆さんも、そう、思いますよね? もう、見るからに、『あばれ太鼓』ですよ(笑)。

 

 メイクを変え、ポーズを変え、何度も撮り直していただいてこれですから、もう、笑っちゃうしかありません。ポスターを見た、岡山県にあるレコード店の奥さんに、「こんなコはダメ。こんなブーたれてるような新人は売れない」と、挨拶に伺うのも拒否されたというエピソード(実話です)が、残っているほどです。

 

 そこをなんとか営業の方が粘りに粘ってくださり、ご挨拶に伺うとー―。「あら、ポスターと全然違うじゃない。こんな写真じゃだめよ!」と、また、お叱りをいただいて。『あばれ太鼓』は、ひと晩中でも話せるくらい、笑えるエピソード満載です。

 

 どんな方にとっても、“初めて” というのは、大切なものですし、大事な、大事な、思い出です。初めての運動会、初めてのおつかい、初めての恋……。心が浮き立つ感じも、ほろ苦い思い出も、すべて、人生を彩る素敵なひとコマです。

 

『あばれ太鼓』を歌いながら、「好きなら好きと言えばいいじゃないの松五郎さん!?」と、心の中で呟いていたわたしも、年齢を重ね、愛情の機微がわかる女になりました。

 

 皆さんも、もう一度、若かったころのことを思い出し、あぁ、そういえば、あんなこともあったなぁ…と、幸せな気分に浸っていただければ嬉しいです。

 

さかもとふゆみ
1967年3月30日生まれ 和歌山県出身 『祝い酒』『夜桜お七』など数多くのヒット曲を持ち、『また君に恋してる』は社会現象にもなった。2020年11月にリリースされた桑田佳祐作詞・作曲『ブッダのように私は死んだ』が大ヒット中

 

構成・工藤晋

 

(週刊FLASH 2021年4月13日号)

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