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宗教学者・島田裕巳が「オンラインサロン」に潜入取材…西野亮廣は「教祖」なのか?

エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2021.04.14 14:29 最終更新日:2021.04.14 14:48

宗教学者・島田裕巳が「オンラインサロン」に潜入取材…西野亮廣は「教祖」なのか?

西野亮廣エンタメ研究所の様子

 

 決定的に重要なのは、中田のサロンでも西野のサロンでも共通して言えることだが、会員のあいだに序列が作られていないことである。

 

 ほかのサロンのことについてはわからないが、サロンを運営しようとする場合、序列を作ろうという考えが生まれるのは、ある意味自然なことである。

 

 サロンに金銭的、あるいは物理的に大きな貢献をした人間を厚遇する。会員をいくつかの種別に分けて、待遇に差をつけるのだ。宗教団体ではそうしたことを試みるところが多い。

 

 新宗教の代表である創価学会でも、活動歴によってブロック長や支部長に昇進していく仕組みがある。それは宗教団体だけのことではない。家元制度では、免状を与えることで金集めをしている。宝塚の私設ファンクラブでも、貢献度によって待遇が変わる。

 

 ところが、私が潜入したオンラインサロンには、そうした序列が導入されてはいない。

 

「西野があなたを意識する権」を購入しても、それで序列が上がるというわけではない。

 

■かつての新宗教のようになっていく

 

 1000円の会費でも7万人いれば、7000万円である。収入としてはかなりのものだ。しかし、内容以外に会員をサロンに縛りつけるものはない。やめようとしている会員を、ほかの会員が引き留めるなどということも起こらない。

 

 それがおこなわれているのは、マルチ商法にサロンを利用しているところである。主宰者が異様な情熱で熱く語りつづけ、事業で次々と成功を収め、発展していかなければ、会員は簡単に離れていくことだろう。

 

 それぞれのサロンのなかでは、オフ会もそうだが、主宰者とは別に会員同士が活動することも可能になっている。それが発展していけば、サロンはより強固なものになっていくのかもしれない。

 

 実際、素人の会員が出るライブをほかの会員が観にいったり、会員の新しく開いた店に出かけていくということはあるようだ。その点では、かつての新宗教のように、相互扶助の組織になっていく余地はある。

 

 まとめてみれば、現在のオンラインサロンは、「カリスマの力が弱い、ゆるやかな繋がりのコミュニティである」ということになるのではないだろうか。

 

 それは、現代の社会が求めるところを象徴しているように思える。強力なカリスマはうさんくさい。強い繋がりのコミュニティは要らない。そんな心性が広がるなかで、オンラインサロンは、そうした社会的な願望を実現する場となっている。

 

 オンラインサロンは、人と人とを結びつけるというかつての新宗教が果たしていた役割を代替しているのである。

 

●しまだひろみ 
1953年生まれ 東京都出身 東京大学大学院博士課程修了(宗教学専攻)。現在は作家、宗教学者、東京女子大学非常勤講師。著書に『創価学会』(新潮新書)、『日本の10大新宗教』(幻冬舎新書)など多数。最新刊は『いつまでも親がいる 超長寿時代の新・親子論』(光文社新書)

 

 次ページでは、そのほかのカリスマたちの「オンラインサロン」を比較する。

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