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美空ひばりのモノマネ誕生秘話…そのとき、モノマネ界の歴史が動いた
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2021.04.19 16:00 最終更新日:2021.04.19 16:00
1970年代のモノマネ界は、歌をそっくりにマネして歌うことが主流でした。そんな時代に、現在のモノマネ芸人のようなデフォルメして笑いにすることを最初に始めたのは、堺すすむさんだとコロッケさんが教えてくれました。
「美空ひばりさんのモノマネで『どうも、ありがと』とか、堺すすむさんがふざけたモノマネをやり始めたんですよ。だから、美空ひばりさんは堺すすむさんのことを嫌がっていたみたいですね(笑)」
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その時代に堺すすむさんがやっていた美空ひばりさんのモノマネが、どれだけ異質だったか、研ナオコさんから聞きました。
「いろいろな方がひばりさんのモノマネをする番組があったんですよ。私もひばりさんのモノマネで歌わせてもらったんですが、歌ってる私の横にひばりさんがいらっしゃるんです。
それで歌ってたらすごく息苦しくて、『なんでこんなに苦しいのかな』と思ってたら、緊張して私、呼吸してなかったんですよ。それぐらい空気とオーラを持った方なんです」
どんな場面でも物怖じしないイメージがある研ナオコさんでさえ、呼吸を忘れるぐらい緊張した美空ひばりさん。そんな偉大なひばりさんのモノマネをやり、それを笑いに結びつける堺すすむさんの芸がどれだけ異質だったかよくわかります。
さらに堺さんご本人から驚くべき話を聞きました。
「僕がやる美空ひばりさんのモノマネの『どうも、ありがと』という言葉は、実はひばりさんは言ってないんです」
ひばりさんのモノマネの定番フレーズ『どうも、ありがと』は堺さんが考えたと言うのです。
「ひばりさんはお客さんに媚びることなんて絶対にしないですから。でも僕は『ありがと』ってひばりさんが言えばいいのにと思ってやってました。そしたらひばりさんのお母さんが、『お嬢はそんなこと言わない』って(笑)」
筆者は、コロッケさんから聞いた「ひばりさんは堺さんを嫌がっていた」という話を堺さん本人に聞いてみました。
「僕が審査員で出演していた『歌まね振りまねスターに挑戦!!』(日本テレビ系)で『ひばり特集』をやりたくて、プロデューサーがひばりさんにお願いに行ったんです。
そしたら『私、堺すすむが嫌いなの。だからあの人を降ろすなら出るわ』って。そしたら僕が降りるしかないですよね(笑)。
その後も『ひばり特集』があって、そのときも僕が降りたんです。でも3回目に『堺さん、いてもいいわ』って言ってくださった」
これはひばりさんが堺さんのモノマネを受け入れてくださった瞬間ではないでしょうか。
そして、このときから数々のモノマネ芸人が『どうも、ありがと』というフレーズを使いはじめ、ひばりさんのモノマネが定番化していきました。
1980年代に入ってからは、モノマネ自慢の一般人がひばりさんのモノマネで『どうも、ありがと』と言った瞬間、番組にゲスト出演していたひばりさんは大爆笑していました。
堺すすむさんの勇気あるモノマネが、その後のモノマネ界に著しい功績をもたらしたと言っても過言ではないでしょう。
取材・文/インタビューマン山下
1968年、香川県生まれ。1992年、世界のナベアツ(現・桂三度)とジャリズム結成、2011年に解散。同年、オモロー山下に改名し、ピン活動するも2017年に芸人を引退。現在はインタビュアー・ライター・お笑いジャーナリスト