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松たか子『大豆田とわ子と三人の元夫』すさまじく面白いのに低視聴率のワケ

エンタメ・アイドル 投稿日:2021.04.20 11:00FLASH編集部

松たか子『大豆田とわ子と三人の元夫』すさまじく面白いのに低視聴率のワケ

 

 めちゃくちゃ面白かった。

 

 先週火曜21時からスタートした松たか子主演のドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』(フジテレビ系)。

 

 3回結婚して3回離婚した大豆田とわ子(松)が、3人の元夫たちに振り回されながら、自分らしい幸せを探していくロマンティックコメディーである。

 

 

 主人公・とわ子と元夫たちの緩急の効いた会話の小気味よさも、女優・伊藤沙莉による、とわ子を揶揄したような独特のナレーションも、センスの塊のような第1話だった。大御所脚本家・坂元裕二氏の手腕を、改めて再確認させられた。

 

 筆者の拙い表現ではかなりの長文でないとこの面白さは伝えきれないのだが、なぜこんなにも面白い作品の視聴率がイマイチだったのかを考察してみたい。

 

 第1話の視聴率は関東地区で7.6%(ビデオリサーチ調べ/平均世帯視聴率)と、合格点の二桁視聴率にはほど遠い結果。関西地区では10.0%とギリギリ二桁に乗せて健闘したが、筆者の「おもしろっ!!」という温度感から言うと、もっともっと多くの人に見てもらいたい気持ちが強く、残念でならない。

 

■脚本家・坂元裕二、ここにあり! という作品

 

 視聴率が振るわなかった理由。

 

 いきなり結論を言うと、主演の松も、元夫を演じる松田龍平、東京03・角田晃広、岡田将生の3人も、演技力は抜群だが、その名前だけで視聴率が取れるタイプではないということだろう。

 

 みな円熟味のあるいい役者だが、視聴率をごっそり取れるような派手さはない。

 

 また、脚本家・坂元氏の近年の作品は、ファンからは高い評価を得るものの、視聴率に結びつかないことが繰り返されている。

 

 現在53歳の坂元氏のキャリアは長く、その名を最初に知らしめたのは、1991年に放送された恋愛ドラマの金字塔『東京ラブストーリー』(フジテレビ系)。

 

 その後もコンスタントに連続ドラマの脚本を担当していたが、筆者の私見では『東京ラブストーリー』以上のインパクトを残せぬまま2010年代に突入していた印象だった。

 

 だが2010年代に入り、母性をテーマにした社会派サスペンス『Mother』(2010年/日本テレビ系)、現代の複雑な結婚観を描いたラブコメディ『最高の離婚』(2013年/フジテレビ系)、困窮するシングルマザーの人生を描いた社会派ドラマ『Woman』(2013年/日本テレビ系)などが、物語性の秀逸さで人気を集めることに。

 

 全話平均視聴率が二桁台のスマッシュヒットとなったが、その数字以上に、視聴していたファンたちの熱量が高かったのがこの3作の共通点だろう。

 

 こうして坂元氏の脚本が一般視聴者にも再評価されはじめたのだが、その後の『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(2016年/フジテレビ系)、『カルテット』(2017年/TBS系)、『anone』(2018年/日本テレビ系)は全話平均視聴率が一桁台。

 

 いずれもSNSなどで大きな話題を呼び、最終回まで視聴していたファンの満足度は高かったものの、視聴率的にはヒットとは言えない作品となってしまった。

 

 では今の坂元氏が“数字”を持っていないのかと言えば、そうではない。

 

『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』で主演を務めていた有村架純と再びタッグを組んだ恋愛映画『花束みたいな恋をした』が大ヒット。

 

 1月29日に公開されると、4月5日時点で観客動員260万人以上、興行収入35億円以上という数字を叩き出しているのだ。コロナ禍の映画でこの数字は十分すぎるほどの成功である。

 

 とは言え、260万人という数字は、日本の総人口の2%程度。映画はリピーターもいるので、実際に『花束みたいな恋をした』を観た人は2%未満だろう。

 

 ここで重要なのは、日本の2%の人が観てくれれば映画は大ヒットとなり、坂本氏の脚本には「お金を出してまで観たいと思ってくれる熱心なファン」が2%もいるということ。彼の作品にはコアなファンがしっかりついているのである。

 

 主要キャストの人気などでとりあえず二桁視聴率は獲得するものの、視聴者の熱量がそれほどでもない “浅く・広いドラマ” もある。

 

 だが坂元氏の手がけるドラマはその真逆で、視聴率はイマイチだったとしても、一定数のファンたちがその沼にどっぷりハマッていく “深く・狭いドラマ” と言えるのかもしれない。

 

 確かに、筆者は『大豆田とわ子と三人の元夫』の洗練された世界観にすさまじく感動したが、それが万人ウケするかどうかはまったく別の話だとも感じていた。「めちゃくちゃ面白い」と思っても、「誰が観ても絶対に面白い」とは思わなかった。

 

 でも、だからこそ観てほしい。

 

 観てみて「全然面白くなかった」という感想でもかまわない。実際、そういう人のほうが多いのかもしれない。「もし、どっぷりハマったらラッキー」ぐらいの、宝くじを引く程度の軽い気持ちで視聴してみてもらいたい。第2話は本日21時放送だ。

 

●堺屋大地
恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『週刊女性PRIME』『日刊SPA!』などに寄稿中

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