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【坂本冬美のモゴモゴモゴ】『また君に恋してる』はジーンズ姿で舞台へ「こんな格好でごめんなさい」

エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2021.04.24 11:00 最終更新日:2021.04.24 11:00

【坂本冬美のモゴモゴモゴ】『また君に恋してる』はジーンズ姿で舞台へ「こんな格好でごめんなさい」

『NHK紅白歌合戦』では2009年と2010年、2年連続で歌唱。『夜桜お七』と人気を二分する、坂本の代表曲に

 

 坂本冬美が、歌手人生35年で生まれた「名曲」を語り尽くす、本誌連載。第4回のテーマは、『また君に恋してる』だ。

 

 

 人生、長く生きていると、『まさか!? えっ!? 嘘?』という場面に遭遇することが、ままあります。一度なら、『たまたま、偶然だよね』で終わりますが、これが同時期に2回重なると、『必然かも?』と思いはじめ、3度めになると、これは、もう、何か大きな力に導かれているような気がしてきます。

 

 

「いいちこさんから、コマーシャルソングのカバーをしてほしいという依頼が来ていますが、どうしますか?」

 

 始まりは、マネージャーのこのひと言でした。これが、最初の “まさか” です。

 

「ビリー・バンバンさんの曲をわたしが歌う?」

 

 戸惑いはありましたが、聴かせていただくと、すごくいい曲でした。どういう経緯で、わたしにお声がかかったのかわかりませんが、お誘いいただいたのだから、やってみようかしら。

 

 まさか、あれほど大ヒットするとは夢にも思わず、軽い気持ちでお引き受けしたというのが、正直なところでした。

 

 2つめの “まさか” は、この曲はコマーシャルの中だけで完結するはずだったのが、中村あゆみさんに書いていただいた『アジアの海賊』をリリースすることが決まっていて、「カップリングにぴったりだから、B面として入れさせていただこう」という話になったことです。

 

 とはいえ、ここまでは、たまたま、偶然という感じでした。

 

 ところが、です。発売直後からじわじわと、携帯の着うたとしてダウンロード数が伸びだして。100万を超えたあたりからはもう、あっという間です。

 

 150万を超えましたという連絡をいただいた翌週には200万、さらに翌週には300万超え……そのスピードには、ただただ驚くばかりで、まさか、まさか、の連続です。

 

“大人のラブソング” というイメージで歌ったのに、10代の若者から、おじさま、おばさままで、皆さんこぞってダウンロードしてくださって。あっちでも、こっちでも、携帯電話からわたしの歌声が聞こえてくる。

 

 ここまでくると、もう “まさか” というよりも、「え〜〜〜〜〜〜っ!?」でしたね(笑)。そして……とどめの “まさか” は、ジーンズ姿でステージに立つようになったことです。

 

 ジャケット写真までは、いいんです。恥ずかしいけど、着物とは違う趣があるといえば、あるような気もするので。

 

 でも、これが、ステージに立つとなると、まるで違ってきます。着物を着て、髪を結い上げて、というのが当たり前なのに、あろうことか、ふだん穿いているジーンズですよ。

 

――ごめんなさいね、こんな格好で。

 

 当時のわたしは、そんな心境でした。ステージの袖からセンターに歩いて行くときは、ほんと、もう心臓がドキドキしっぱなしです。

 

 わたしも戸惑いましたが、おじさまたちが感じた違和感は、かなりのものだったみたいです。ジーンズにジャケットでステージに立ったわたしを見て、「なんだ、坂本冬美はまだ出ないのか?」と、お手洗いに立つ方がいらっしゃいましたから。それも、かなり多くの方が(笑)。

 

 これ、ネタじゃないんですよ。このエピソードをお話しすると、皆さん、疑わしい目をしますが……100%実話なんです(笑)。なんの作為もなく、売ってやろうという思惑もなく、点と点が自然に繋がり、輪になって、それが、どんどん広がっていく――。

 

 わたしにとっては、天から授かった宝物のような一曲です。

 

さかもとふゆみ
1967年3月30日生まれ 和歌山県出身  『祝い酒』『夜桜お七』など数多くのヒット曲を持ち、『また君に恋してる』は社会現象にもなった。'20年11月にリリースされた桑田佳祐作詞・作曲『ブッダのように私は死んだ』が大ヒット中

 

構成・工藤晋

 

(週刊FLASH 2021年5月4日号)

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