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井上芳雄、亡き社長の言葉を胸に舞台へ「お前の歌を世の中が必要とする」
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2021.05.13 11:00 最終更新日:2021.05.13 11:00
■人生を変えた「小林多喜二」
ミュージカルは、ひとつの作品が幾度となく上演される。井上は『モーツァルト!』を5度、『エリザベート』では、皇太子ルドルフを3度、死神トートも3度演じた。
台詞劇だが、2009年に初演された、井上ひさし氏最後の戯曲、『組曲虐殺』での小林多喜二も当たり役で、3度演じた。井上はこの作品で演技に開眼したという。
「多喜二は共産党の活動家で作家ですが、『不公平なことが昔から起きているのは、世の中の仕組みのせいだ』と言う。彼の主張はきわめて当たり前なんですね。
ですが、多喜二の雰囲気を出すなんてとても難しく、初演の稽古中に社長に電話してこぼしたんです。そうしたら、『帰りに寄ってくか』と言われ、まさに今座っているこの席で社長と話したんです」
武男さんは多喜二と同じ北海道出身。高校で多喜二について教わって以来、その思想に共鳴し、多喜二の生きた時代の空気もまだ知っていた。
「役者じゃないんで具体的な指導はありませんでしたが、当時の社会状況について教わり、それが今とつながっていることが伝わってきました」
武男さんの言葉で役が呑み込め、作者の井上ひさし氏にも絶賛された。
それ以降、井上はこまつ座(井上ひさしの戯曲のみを上演する劇団)の公演にたびたび出演、現在は井上ひさしの最初の戯曲『日本人のへそ』に出演中だ。
一方、ミュージカルでの代表作『エリザベート』は昨年も上演予定だったが、コロナ禍で全公演が中止。デビュー20周年のスペシャルライブも延期となった。
「僕はまだいいほう。ドラマ(『半沢直樹』、2020年、TBS系)をはじめ、意外な方面から声をかけてもらえたし、配信という新たな手段で歌う機会も増えた。
ただ、共演者やスタッフには生活に困る人が大勢出ました。だから、今後の可能性を探る意味でも、1月にはオリジナルの配信ミュージカル『箱の中のオルゲル』に挑戦しました」
「舞台は大勢で作り上げるもの。世の中の縮図だ」――井上芳雄は武男さんの言葉を胸に、役者の責任と喜びを感じながら舞台に立ち続ける。
いのうえよしお
1979年7月6日生まれ 福岡県出身 2000年、ミュージカル『エリザベート』の皇太子ルドルフ役でデビュー。高い歌唱力と存在感でミュージカルや舞台を中心に活躍。音楽番組やコンサートで歌手活動も精力的におこなう。NHK総合『はやウタ』に司会として出演中。4月から、デビュー20周年を飾る「井上芳雄 by MYSELF スペシャルライブ」の全国ツアーを開催
【バーデンバーデン】
JR「有楽町駅」より徒歩3分、東京メトロ「日比谷駅」より徒歩2分
住所/東京都千代田区有楽町2-1-8 JR高架下
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取材/文・鈴木隆祐
(週刊FLASH 2021年4月27日号)