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『コントが始まる』菅田将暉が発した「努力は報われる?」に答えは出せるのか
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2021.05.22 11:00 最終更新日:2021.05.22 11:00
「努力って報われると思いますか?」
わりとよく聞くフレーズだが、この言葉に真剣に向き合った若者ほど、さぞかし苦しんだことだろう。
菅田将暉、神木隆之介、仲野大賀の3人が売れないコントトリオ「マクベス」を演じる『コントが始まる』(日本テレビ系)。
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冒頭の質問は、先週土曜放送の第5話で菅田演じる主人公・春斗が、有村架純演じる「マクベス」ファンの里穂子に向けて投げかけたものだった。
「マクベス」は結成10年が目前に迫っており、3人は売れないまま芸人を続けるかどうか葛藤していたが、この第5話で1カ月後の単独ライブを最後に解散することが正式に決定。そんな流れで春斗は里穂子に「努力って報われると思いますか?」と尋ねたのだ。
■有村架純だから言えた “キレイなきれいごと” とは?
「努力って報われると思いますか?」という問いは、本当に深く考えさせられる難問だろう。
売れっ子となったアイドルやオリンピックのメダリストなどのなかには、「努力は必ず報われる」と真顔で豪語する人は少なくない。
しかし、「努力は必ず報われる」と言う考え方は、典型的な「生存者バイアス」だと思うのだ。
「生存者バイアス」とは、競争で生き残った者のみがおこなってしまう誤った判断・価値観などを指す。
芸能界でもスポーツ界でも頂点にたどり着けるのはほんの一握りなわけで、日の目を見ることなく、脱落したり淘汰されたりしていく人間のほうが圧倒的に多いのは言わずもがな。
そういった厳しい業界で成功するのは、才能があってなおかつ努力もしてきた者であり、才能ない者がいくら死に物狂いで頑張ってもその努力はほぼ報われない。
一見、芸能界やスポーツ界で頂点に立った成功者の言葉は説得力があるように聞こえるが、「努力は必ず報われる」という言葉は、たまたま才能に恵まれた者が努力した末の結果論でしかない。才能を持つ者がそのフィルター越しに見た価値観を、才能を持たぬ凡人に押しつけているだけなのである。
もし「努力は必ず報われる」なんて暴論を肯定してしまうと、生存競争で敗れた凡人たちの血の滲むような努力を、「その努力は偽りだった」と切り捨てることになってしまう。
さて、第5話では、一向に芽が出ない「マクベス」を解散すべきかどうか、メンバー3人がファミレスで話し合う重要なシーンがあった。春斗はトリオを続けていきたいと考えているが、そんな春斗と対立した仲野演じる潤平が言い放ったセリフがこちら。
「もう平凡じゃないフリすんの疲れたわ」
非凡な者たちが集う華やかな業界を目指し、夢破れた経験のある人たちにとって、ズシン……と胸に重くのしかかる言葉ではないだろうか。
努力が報われるかどうかの議論の答え。それは、“努力は報われない可能性のほうが高いが、努力しないと成功は得られない” ということだと思うが、「マクベス」の3人には、報われなかった現実が突きつけられている。
話を戻そう。春斗から「努力って報われると思いますか?」と問いかけられた里穂子は、最終的にこう答えていた。
「私から申し上げられることは、『マクベス』でやってきた10年間は決して無駄ではない、ということです」
里穂子は「努力は必ず報われる」なんていう、現実逃避の言葉は言わなかったが、「決して無駄ではない」という言葉も、ともすれば、きれいごとに聞こえる。
しかし、それは春斗たちの10年間を優しく包み込むように肯定してくれた言葉であり、部外者だからこそ言ってあげられる “キレイなきれいごと” だったように思う。
里穂子が言うように「『マクベス』でやってきた10年間は決して無駄ではない」かどうかは、春斗たち自身の気の持ちようなのかもしれない。
これって「マクベス」の3人に限らず、必死に努力をしても夢破れた経験がある人全員に、普遍的に言えることではないだろうか。
努力が報われなかったとしても、その努力が無駄だったのか、それとも何らかの意味・価値があったのかは、その人次第……そんな人生の真理に気づかせてくれる第5話だった。
1カ月後の単独ライブで解散する「マクベス」の3人が、これからどのような答えを導き出していくのか? 注目の第6話は今夜22時から放送だ。
●堺屋大地
恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『週刊女性PRIME』『日刊SPA!』などに寄稿中