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【坂本冬美のモゴモゴモゴ】『男の情話』演歌のイロハは島倉千代子さんに教えていただいた

『男の情話』は、しっとりとした男歌
■着物を着たらドタドタ歩かない
あれは……デビュー1年め。初めて、島倉さんにお会いしたときのことでした。
わたしの誕生日は、1967年3月30日。島倉さんが、1938年3月30日。そうです、同じなんです。
ただの偶然!? いやいや、これもご縁です。歌の神様のお導きです。黙っているなんてできません。
「わたし、島倉さんとお誕生日が同じなんです!」
ペコリと頭を下げると、島倉さんがひと言。
「あら!? あなた、若く見えるわね」
……。
一瞬、島倉さん流のジョークかなとも思いましたが、お顔が真顔です。もしかして……同い年だと思われた!?
怖くてお聞きできませんでしたが、たぶんそういうことなんだろうなと思います(笑)。
それから、島倉さんには本当に可愛がっていただきました。
今も昔も、演歌の世界は縦社会。同じステージに立っていても、先輩後輩の間には、歴然とした差があります。
そこへ、わたしが無邪気にすーっと飛び込んだものですから、「あら、おもしろいコね」と、思ってくださったのかもしれません。
着物を着たら、ドタドタ歩かない。
二の腕を見せちゃいけないから、手を挙げるときは、こうよ。
カメリハのときも、きちんとお化粧をして着物を着るように。そういうところで手を抜いちゃダメよ。
スタンバイは30分前よ。
微に入り細を穿つように、一から十まで、すべてを教えていただきました。
「家を一歩出たら、あなたは、もう歌手・坂本冬美なんだから。その自覚を持ちなさい」
大先輩から教えていただいたこの言葉は、今もわたしの中で大切に生き続けています。
さかもとふゆみ
1967年3月30日生まれ 和歌山県出身 『祝い酒』『夜桜お七』など数多くのヒット曲を持ち、『また君に恋してる』は社会現象にもなった。最新シングル『ブッダのように私は死んだ』を含む、35周年記念ベスト『坂本冬美35th』が発売中
写真・中村功
構成・工藤晋
(週刊FLASH 2021年6月15日号)