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【坂本冬美のモゴモゴモゴ】中村あゆみ姐さんが贈ってくれた『アジアの海賊』
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2021.06.19 06:00 最終更新日:2021.06.19 06:36
めげない、挫けない、諦めない。しっかりと大地に両足を踏ん張って、――さぁ、どこからでもかかってきなさい!
と、仁王立ち。いつだってエネルギー充填200%。元気印300%……それが、中村あゆみ姐さんです。
学年は一緒だけど、わたしは未(ひつじ)年の3月生まれで、あゆみ姐さんは丙午(ひのえうま)の6月。わたしのほうが、9カ月も年下なんです。これを言うと、あゆみ姐さんは「同い年は同い年でしょ!」と嫌がるんですけどね、事実は事実ですから、うふふふ。
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丙午のあゆみ姐さんは、とにかくすごいんです。パワフル3乗でもまだ足りないくらい、熱量が半端じゃない。ゴルフの約束の時間が多少違っても、ノープロブレム!
「冬美ちゃんごめん、ごめん!」と、大声で叫びながら悠然と現われるところは、もうさすが! その豪快さは、生粋のロッカーです。
それに引き換えわたしは……つくづく、フツーだなぁと思っちゃいます。いや、もちろん、この世界にいること自体、フツーじゃないのかもしれませんが、なんたって、タダモノじゃない方がたくさんいらっしゃいますからね。やっぱりわたしは、フツーです(笑)。
だから――デビューしたてのころは、“トップを目指して頑張るぞ!” なぁんて、柄にもなく力んでいましたが、いつのころからか、わたしの目標は3番手。トップは到底無理だし、トップを狙っていないから、2番手もちょっと違う。でも、4番手、5番手じゃ悔しいから3番手です。
■ここで守りに入らず花火を打ち上げよう
バリバリのトップ集団を走るあゆみ姐さんが、「冬美ちゃんにぴったりの曲があるから」と贈ってくれたのが、『アジアの海賊』(2009年発売)でした。
3作続けて演歌の曲をリリースし、「ここで守りに入らず、ど~んと一発、花火を打ち上げましょう」と、スタッフと話していたときだったので、タイミングもバッチリでした。
当時、ソマリアの海賊が話題となっていて、「さすがにまずいんじゃないかな」という不安も、「ガハハハハ。最高じゃねぇか」という社長のひと言でGOサイン。
あゆみ姐さんが新たにアレンジしてくれた三味線や和太鼓、尺八をフィーチャーしつつ、ロックを基調にしたミクスチャー・サウンドで、いざ、勝負!
プロモーションの地に選んだのは新宿。ゲリラライブをやりました。演歌歌手でゲリラライブをやったことがあるのは、おそらく小林幸子さんと、わたしくらいじゃないかと思います。
ところが、いざ歌いだしたら、いきなり電気が落ちてしまって。冷や汗がタラリです。スタッフが電柱に登って、なんとか最悪の事態だけは避けられましたが、演奏が止まっていた間は身がすくむ思いでした。
そんななか、一人悠然としていたのが、ゲストとして来てくださったあゆみ姐さんです。
――大丈夫、大丈夫。何が来てもOKだから。
戸惑うどころか、逆にハートに火がついたような感じで。もしかすると、あゆみ姐さんは、この世の中に怖いものなんてひとつもないのかもしれません。
みんなの幸せを願って、いつだって全力投球。持っているエネルギーを全部使い切っちゃうあゆみ姐さんは、きっとそうすることで、いつか、自分にその幸せが返ってくるということを知っているんだと思います。それも、計算じゃなく、感覚で。
あゆみ姐さん、コロナが落ち着いたら、また、一緒にご飯しましょう。
さかもとふゆみ
1967年3月30日生まれ 和歌山県出身 『祝い酒』『夜桜お七』など数多くのヒット曲を持ち、『また君に恋してる』は社会現象にもなった。最新シングル『ブッダのように私は死んだ』を含む、35周年記念ベスト『坂本冬美35th』が発売中
写真・中村功
構成・工藤晋
(週刊FLASH 2021年6月29日・7月6日号)