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『コントが始まる』最終回…あえて“波”を捨て菅田将暉や有村架純に平凡な人生を歩ませた深い意味
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2021.06.20 18:10 最終更新日:2021.06.20 21:08
淡々と粛々とエンディングに向かい、そのまま終幕した。
6月19日に最終回が放送された『コントが始まる』(日本テレビ系)は、最後まで若者のリアルを描き出した作品だったように思う。
春斗(菅田将暉)、瞬太(神木隆之介)、潤平(仲野大賀)による売れないコントトリオ「マクベス」と、彼らの大ファンである里穂子(有村架純)、里穂子の妹・つむぎ(古川琴音)による青春群像。
最終回では、「マクベス」解散と5人のその後のストーリーが展開。これまでたびたび起こっていた「マクベス」間の対立など、そういったトラブルや事件は起こらなかった。物語に “波” はなく、いい意味で終始 “凪” だったのだ。
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■終始 “凪” だった最終回とは…
まず、「マクベス」の解散ライブは、最終回開始10分ほどでつつがなく終了。収容キャパ50人弱の小さな劇場ながら満席となっており、ファンたちの温かい拍手に包まれてライブは終わる。解散ライブを後半に持ってきて、何かしらの “波” を作って盛り上げるという手法もあっただろうが、脚本家や制作陣はそれを選ばなかったということだ。
解散ライブ後、深夜に3人で訪れたラーメン店で正式に解散の瞬間を迎えたり、同居していた部屋の冷蔵庫を誰がもらうかのジャンケンをしたりと、涙腺をヤラれるシーンはいくつかあったが、基本的に粛々と物語は進んでいく。
余談だが、ジャンケンで勝利した春斗が鼻を真っ赤にして涙を流す演技は、菅田の真骨頂だと感じた。
後半パートでたっぷり描かれたのは、「マクベス」解散後に1人となった春斗と、「マクベス」ファンである里穂子による対話。12分以上も費やされており、それは実に最終回の4分の1以上の尺だった。春斗と里穂子は互いに想いを語り合うことで、「マクベス」とともに生きていた自分の人生に一区切りつけたのだろう。
その後の5人は、世界に冒険に出た瞬太以外は、平凡な人生を歩んでいく。潤平は家業の酒屋を継ぐべく実家に戻り、里穂子はファミレスのバイトをやめ一般企業に就職し、つむぎは芸能事務所でマネージャーを続けている。そして春斗は、第1話のコント「水のトラブル」で自分が演じていた水道トラブル修理会社に就職した。
最後はコント「水のトラブル」の冒頭同様、春斗が水道トラブルの依頼をしてきたラーメン店を訪れるシーンで幕を下ろしたのである――。
物語を綺麗に終わらせるために、描くべきことを丁寧に描ききったという印象。そんな最終回を終始包んでいた雰囲気は “達観”。いや、誤解を恐れずに言えば、筆者にはあきらめから悟りを得た、登場人物たちの “諦観” に見えた。
大きな波もうねりもない最終回。リアルな物語だった。
水道トラブル修理業者になった春斗をはじめ、瞬太以外の4人のこれからの人生は、おそらくありきたりだ。「マクベス」から離れ、ごくごく普通の人生が始まっていた。
特別な存在になれなかった若者たちの特にドラマの起こらない人生……を予感させた。
しかし、そんな普通の人生を歩んでいくだろう春斗たちを描いたドラマが、『コントが始まる』という作品として、今ここに存在するのも事実なのだ。
つまり逆説的だが、平凡な人生を歩む誰しもがドラマの主人公なんじゃないかと思わせてくれた。誰しもが菅田将暉であり、有村架純なのではないか、と。当たり前だが、誰もが自分の人生において主人公なのである。そんな当たり前のことを改めて教えてくれたドラマだったのかもしれない。
堺屋大地
恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『週刊女性PRIME』『日刊SPA!』などに寄稿中