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尾美としのり、幼稚園の仮病で始まった芸能人生「NGが一回出ると落ち着く(笑)」
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2021.06.23 16:00 最終更新日:2021.06.23 16:00
■大林監督の勘違いで主役に大抜擢
「オーディションの前に台本を読ませていただいたんですが、15歳と多感な時期でもあったので、こんな女っぽい役はやりたくない、出たら大変なことになるぞと(笑)。
それでオーディションで(大林宣彦)監督とお会いしたときに、違うことばかりを言ったと思います。たとえば監督が『本を読む?』と聞けば『読みません』。『映画は観る?』と聞けば『観ません』と。ひどいですよね、嫌われるようなことばかり言って」
まんまとことはうまく運び、大林監督からはほかの役を打診された。喜んで帰った尾美は、さっぱりしようと肩につくくらい長かった髪をバッサリ切った。
翌日、劇団からもう一度、大林監督に会いに行ってほしいと言われて会いに行くと、事態はあらぬ方向に。
「『髪の毛を切ってまでこの映画に懸ける尾美くんに、僕はこの映画を懸ける』っておっしゃって。誤解というかすごい勘違いなんです(笑)。
当時は本当にその役が嫌でしたけど、俳優っておもしろいんだよっていうきっかけを与えてくれた作品でした。本当にいろんなことを教えていただきましたね。
相米慎二監督の映画にもよく出させていただいたんですが、大林監督と相米監督がまた全然違う。本当に相米慎二の世界にも染めていただいて、大林宣彦の世界にも染めていただいて。それはすごく財産になったと思っています」
その後、山田洋次監督の『ダウンタウンヒーローズ』(1988年)で同年代の役者たちと共演したことで初めて仕事が楽しいと感じ、シリーズ化された『鬼平犯科帳』(1989年~2016年、フジテレビ系)では京都撮影所の厳しさを知り、鍛えられた。
そして『マンハッタンラブストーリー』(2003年、TBS系)で宮藤官九郎と出会う。
「今まで読んだ台本と全然違うんですよ。どうやればいいんだろう、どこまでやるんだろうと思って、放送を見ながら自分が演じたのは初めてでした。宮藤さんの台詞はアドリブみたいでおもしろかったですね」
それからクドカン作品の常連となった尾美は、国民的ドラマ、NHKの『あまちゃん』(2013年)にも出演。出演者とは今でもファミリー的なつき合いがあり、3月にのん(27)の配信ライブに参加して、植木等の『ハッスルホイ』をノリノリで披露した。ここで尾美から予想もしないひと言が。
「とにかく恥ずかしかったですよ(笑)。僕は人前に出るのが苦手。それは子役時代から変わらず、今も恥ずかしいです。いまだに新しい現場に入る前日は、基本、緊張して寝られないというか、いつもドキドキしてます。
本当にあがり性というか緊張しいで、NGが一回出ると落ち着きます。初日に台詞があったり大事なシーンがあると、心の中では『勘弁してよ~』って思いながらやってます(笑)」
1クールのドラマの間で、尾美の姿を見ないことがないぐらい、幅広い役で活躍をしている。現在は『半径5メートル』(NHK)で女性週刊誌の心優しいデスク、『桜の塔』(テレビ朝日系)では冷淡な警視総監と、真逆の役を演じる。
役によって尾美としのりが別人に見えるような気がする。
「同じ役ばかりもつまらないですし、違う役を振ってくれるのはありがたいと思っています。
でも、基本的に僕は台本どおりにやっているつもりなんですよ。こういうふうにやりたいとか、尾美としのりはこうでなければいけないという気持ちはなくて。台本を読んで、こんなふうにやろうかな、こんなふうに表現したいとかですね。
ただ、慣れちゃうのが怖いというか、こういうふうにしておけば大丈夫なんじゃないかと思うことが怖い。観てる側がそれを感じ取ると興ざめするだろうし、またこんなことをやってると思われるのも癪ですしね。
せっかくこの仕事をやっているんだから、いろんなことをやってみたいとは思いますね。でも恥ずかしいですよ(笑)」
そう話すと気合を入れて、激辛味噌ラーメンを勢いよく口に運んだ。額からは一気に汗が噴き出す。これで仕事もリセット。尾美が日常に戻る瞬間だ。
おみとしのり
1965年12月7日生まれ 東京都出身 1978年に市川崑監督の『火の鳥』でデビュー。1983年、大林宣彦監督の『転校生』で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。その後、相米慎二監督、脚本家・宮藤官九郎の作品など、映画、テレビドラマで幅広く活躍。現在、ドラマ『半径5メートル』(NHK)、『桜の塔』(テレビ朝日系)に出演中。映画『リカ~自称28歳の純愛モンスター~』(6月18日公開)にも出演
【宝来】
住所/東京都目黒区中目黒1-4-18
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月曜日~土曜日11:30~14:30、17:30~22:30(L.O.21:30)、日曜日11:30~21:00(L.O.20:00)
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写真提供・NHK
(週刊FLASH 2021年6月22日号)