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名曲散歩/八神純子『みずいろの雨』原点は南米チリにあった
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2021.07.04 16:00 最終更新日:2021.07.04 16:00
東京・神田の古いビルの2階。そこには夜な夜な紳士淑女が集まり、うんちくを披露しあう歌謡曲バーがあるという。今宵も有線から、あの名曲が流れてきた。
お客さん:お、このイントロは八神純子の『みずいろの雨』。日本人離れした圧倒的な歌唱力、まさにクリスタルボイス。
マスター:1978年にリリースされた5枚目のシングルで、60万枚を売り上げた。
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お客さん:八神純子と言えば、ポプコン出身のイメージが強い。
マスター:そう、彼女はまさにポプコンの申し子。16歳でエントリーした1974年の第8回大会で『雨の日のひとりごと』が優秀曲賞、そして『幸せの時』が入賞と、史上初のW受賞を達成。さらに翌年も『幸せの国で』で2年連続優秀曲賞に輝いた。
お客さん:グランプリには届かなかったけど、ポプコンエリートであることは間違いないね。
マスター:それと同時に、2年連続で世界歌謡祭にも出場したんだけど、1975年大会で運命の出会いがあった。
お客さん:運命とは?
マスター:たまたまエントリーナンバーで隣り合わせたのがチリのアーティストだった。その人に「チリでイベントがあるから来ない?」と誘われ、二つ返事でOK。1976年2月に参加したその音楽イベントが「ビニャ・デル・マール音楽祭」だった。
お客さん:通称「チリ国際音楽祭」と呼ばれる南米最大級の音楽イベント。
マスター:ここで八神純子は『もう忘れましょう』という曲で6位入賞を果たす。それよりなにより、滞在中、「チリに住みたい!」と思うほど楽しすぎて、そのままラテン音楽にどっぷりはまり込んだという。
お客さん:言われてみれば、彼女の音楽は……。
マスター:『思い出は美しすぎて』はボサノバ、そして『みずいろの雨』はサンバ。
お客さん:だよねえ!
マスター:実は『みずいろの雨』は、チリに行ったときのことを思い出しながら、原宿の歩道橋を渡っていたときに、ぱっと浮かんだメロディだという。
お客さん:チリでの楽しい思い出がなかったら、あの名曲は生まれていなかったのか。世界歌謡祭で隣り合ったチリ人に、僕らも感謝しないとね。
おっ、次の曲は……。
文/安野智彦
『グッド!モーニング』(テレビ朝日系)などを担当する放送作家。神田で「80年代酒場 部室」を開業中
参考:『昭和40年男vol.34』(クレタパブリッシング)/富澤一誠『フォーク名曲事典300曲』(ヤマハミュージックメディア)/TOKYO MX『ミュージック・モア』(2020年9月25日)