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お笑い界の徒弟制度とは…“弟子出身” 芸人の実情を渡辺正行とナイツ塙に聞いた

エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2021.07.12 11:00 最終更新日:2021.07.12 11:00

お笑い界の徒弟制度とは…“弟子出身” 芸人の実情を渡辺正行とナイツ塙に聞いた

 

 先月、師弟関係の三遊亭円楽師匠と伊集院光さんが「三遊亭円楽・伊集院光 二人会」を開催して話題を集めました。

 

 落語の世界には、現在も徒弟制度があります。しかし、お笑い芸人は昔と違って、弟子入りをきっかけに芸人界に入って来る人はほとんどいません。

 

 なぜそうなったかというと、1982年に吉本興業が吉本総合芸能学院(NSC)を開校したことが要因だと思われます。

 

 

 これまでは、芸人になるためには弟子入りしか手段がないと一般的には思われていました。しかし、お笑いの養成学校ができたことで選択肢が増えたのです。

 

 それに加え、NSCの第1期生からダウンタウンさんという、とんでもない売れっ子芸人が誕生したことで、お笑い養成所志望者に拍車がかかったと思われます。

 

 筆者は1991年にNSCに入学しましたが、もうそのときには、すでに養成所出身の芸人が大半をしめていました。

 

 筆者と同世代であるバナナマンは数少ない弟子経験者。関東では弟子のことを付き人と表現することがありますが、弟子と同様の意味です。

 

 バナナマンの師匠である渡辺正行さんに、バナナマンが付き人をしていた当時の話を以前お聞きしました。

 

「設楽(統)は、事務所が運転手を募集して、3人ぐらい来たなかから僕が選びました。日村(勇紀)は、あいつがまだ高校生の頃に『陸上部』というコンビを組んで『ラ・ママ新人コント大会』(渡辺さんが主宰する若手のネタライブ)に出てたんですよ。

 

 そのコンビが面白かったんで、僕が『高校を卒業してどうするんだ?』って聞いたら『お笑いをやっていきたいです』って言うから、『じゃあウチの事務所に入ったら』って。

 

 芸能界のこととかわからないだろうから、1カ月でいいから、俺の家で住み込みで付き人をやりなさいと。それでウチの地下に住まわせて、日村は掃除から洗濯から全部やってました」

 

 日村さんに至っては、現在では珍しい師匠の家に住みながら芸や礼儀を学ぶ『内弟子』と呼ばれる制度を経験していたのです。

 

 さらに、日村さんの内弟子時代のエピソードを渡辺さんが懐かしそうに話してくれました。

 

「日村から後で聞いたら、その頃、僕がちょうど減量しているときだったみたいなんですよ。それで日村は『あのとき、リーダーが毎日蕎麦しか食わなくて、僕らも毎日一緒に蕎麦を食わされて。イヤでしたよ』って(笑)。

 

 でも付き人の最後の日には『すき焼きを食べさせてもらいました』って言ってましたけどね」

 

 一方、設楽さんは渡辺さんの運転手兼付き人を続けながら、相方を探していました。

 

「ウチの劇団員(劇団七曜日)がお笑いグループをやりたいから、メンバーを集めたの。そこに日村と設楽が来てたのよ。だけど2人は『あの人たちとグループはちょっとね』となって『じゃあ2人で組もうか』となったみたい。それでできたのがバナナマン」

 

 弟子出身芸人が少なくなっている、もう一つの理由を、以前、ナイツの塙宣之さんに取材したときにお聞きしました。

 

「弟子入りしてない芸人は弟子を取ってはいけないんですよ。でも僕らは内海桂子師匠の弟子なんで取れます」

 

 弟子経験者しか弟子を取れないルールなら、必然的に弟子出身者が減っていくのも当然です。

 

「弟子を持つって、人の人生を背負うわけだから、すごく面倒くさいし、イヤじゃないですか? でも、そのイヤなことで、またなにか違うパワーが生まれるのかなという気がするんです。

 

 僕らはイヤなことに挑戦していかないといけないと思っているから、いま自分たちができてイヤなことといえば、弟子を取ること。

 

 もし弟子を取って毎日が憂鬱になったら、それはそれで面白いかなと思っています(笑)」

 

 こう、2019年に弟子をとる思いがあると話していました。すると翌年、実際に塙さんは弟子をとったのです。

 

 かつて養成所出身のダウンタウンさんが活躍し養成所志望者が増えたように、お笑い界の徒弟制度という文化を守ってもらうためにも、弟子出身芸人には、ぜひ頑張って活躍していただきたいですね。

 

インタビューマン山下

 

1968年、香川県生まれ。1992年、世界のナベアツ(現・桂三度)とジャリズム結成、2011年に解散。同年、オモロー山下に改名し、ピン活動するも2017年に芸人を引退しライターに転身。しかし2021年に芸人に復帰し、現在は芸人とライターの二足のわらじで活動している。

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