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佐藤優が語る『ゴルゴ13』愛「大使館で回し読み…プロの外交官の教科書なんです」
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2021.07.27 11:00 最終更新日:2021.07.27 11:00
7月5日に発売された201巻(リイド社)で『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(集英社)の200巻を上回り、「最も発行巻数が多い単一漫画シリーズ」としてギネス記録を達成した「ゴルゴ13」。国籍不明の超A級スナイパー「ゴルゴ13」ことデューク・東郷の活躍を描く同作品は1968年11月29日発売の「ビッグコミック」(小学館)から連載を開始。以来、今年で54年めを迎える。
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作家で元外務省主任分析官の佐藤優氏は、連載当初から50年以上に及ぶ熱心な読者だ。「新・知の巨人」が『ゴルゴ13』愛を本誌に語り尽くした。
「かつて外務省にいたころは、国際的な事件が起きるたびに『ゴルゴ13がいればなあ』という声が、あちこちから聞こえてきたものです。モスクワの大使館勤務時代は『ゴルゴ13』が連載された『ビッグコミック』を取り寄せて回し読みをしていました」
佐藤氏によれば、『ゴルゴ13』の最大の魅力は、緻密な取材に基づいたリアリティにあるという。
「とにかく抜群におもしろいんですよ。我々、情報の世界に身を置く人間が読んでもおもしろい。それはリアリティがあるからです。中東、ロシア、アメリカ…舞台は変わっても、現実に起きていることが描かれている。それを少しずつデフォルメしながら、それでもベースには現実の世界があるからリアリティがあるんです。
そのリアリティは綿密な取材に裏づけされたものです。作者のさいとうたかをさんは内外の新聞は言うに及ばず、『ジェーン年鑑』などの軍事的資料、さらに近代史の本も相当読み込んでいるはずです。資料写真も丹念に目を通しているでしょう。外交官や軍人などの現場の話も聞いているはずです。そうした分厚い取材の蓄積があるから、『ゴルゴ13』には大きな嘘がない。『インテリジェンスの教科書』と言われますが、そう言われるだけの内容は十分にあります」
また、あくまで娯楽作品に徹し、「政治的主張」を排している点も、漫画としての魅力を高めていると佐藤氏は語る。
「じつは、『ゴルゴ13』には朝鮮半島物がないんですよ。作者のさいとうたかをさんにお会いしたときに聞いたんですが、朝鮮半島は歴史的に難しい経緯があるから、軽々に娯楽作品として描くことはできないというんです。つまり、『ゴルゴ13』は政治的主張をする作品ではなくて、あくまで娯楽作品だということです。読んでもらって楽しければいいという考え方なんです。さいとうさんは優れた漫画家だからこそ娯楽に徹しているんです。おもしろさよりも理屈っぽさが勝つと、読者は離れていってしまう。ギネス記録に認定されるほど長く続いて来たのは、娯楽作品としておもしろかったから。これに尽きると思います」
元外務省主任分析官もお墨つきの「インテリジェンスの教科書」。先行きの見通せない世界に生きる我々を導いてくれるのは、デューク東郷かもしれない。