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比嘉愛未『推しの王子様』どうにも気持ち悪くて、ぜんぜん “推せない” 理由
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2021.07.29 11:00 最終更新日:2021.07.29 11:00
『推しの王子様』(フジテレビ系)を気持ち悪いドラマだと感じた理由は明白だった。
もし、主人公の36歳・女社長とお相手の23歳・イケメンの性別が逆だったら、ドン引き確定のストーリーだったからである。10年ぐらい前なら大丈夫だったかもしれないが、ジェンダーレスが声高に叫ばれるようになった今、時代的にこの設定を楽しめなくなっている。
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適応障害で降板した深田恭子の代役として、比嘉愛未が主演に抜擢された『推しの王子様』。ベンチャー系ゲーム会社の社長である主人公・日高泉美(比嘉)が、自身が手がけた乙女ゲームの推しキャラにそっくりな青年・五十嵐航(渡邊圭祐)を、理想の男に育てていくというロマンティック・コメディだ。先週木曜に第2話が放送されていた。
■36歳・女社長と23歳・イケメン、男女が逆だったら……?
泉美は4年前に起業し、最初に作った乙女ゲー『ラブ・マイ・ペガサス』が累計1000万超ダウンロードの大ヒットとなり、一躍、時の人に。新進気鋭の凄腕女社長的にテレビや雑誌で取り上げられ、高級タワマン住まいの勝ち組となっていた。
『ラブ・マイ・ペガサス』に登場するケント様は、外見から内面まで泉美の理想を詰め込んだ超絶イケメンなキャラクターで、彼女は自分が生み出したキャラに恋をし、“推し” ているのである。
そんな泉美の前に、ケント様と瓜二つのルックスを持つ航が偶然現れる。しかし、航がケント様にそっくりなのは見た目だけで、中身は漢字も敬語もろくに知らない教養のないおバカで、ガサツ、無神経、無気力というダメ男だったのだ。
けれど泉美は、夢もやりたいこともなく何者にもなれていなかったかつての自分と航を重ね合わせ、「私があなたを一人前の男に育てる」「あなたの居場所を用意するから」と宣言。そして、航に似合う高級スーツ一式を買い与え、美容院にも連れていき、身だしなみを整えて見た目を完璧にケント様に近づける。さらには社長権限で航を自社の社員にしてしまうのだった。
「彼を上等な男に育てよう。外見も中身も、最高の王子様に!」
この声高な泉美のナレーションで第1話は終了した。続く第2話では、航が公園で野宿しようとしているところを見かけ、一時的な措置としてなかば強引に自身の高級タワマンに航を住まわせるのである。
……さて、この36歳・女社長と23歳・イケメンのお話、もし性別が逆だったらみなさんはどう感じるだろう。
一発当てたイケイケ中年社長(男)が、自分の推しキャラそっくりな若い美女に出会い、たくさんのブランド服を買い与える。それだけでなく、教養がなく礼儀も知らないにもかかわわらず、いきなり自社の社員に採用し、高級タワマンで同居させる。それもこれも、すべては自分の思い描く理想どおりの最高のお姫様に育てあげるため。
コレ、めちゃくちゃ気持ち悪くないか? “パパ活ドラマ” なんて揶揄されるのが目に見えている。
ラブコメ作品にそんな指摘をすること自体がナンセンスだと言う方もいるだろう。確かに、べつに年上女社長が若いイケメンを育てるラブコメがあってもいいのかもしれない……前時代的な価値観ならば。だが、ジェンダーレスな社会を目指すなら、やはりこのストーリーは、かなりナンセンスではないだろうか。
これが本作を “推せない” 最大の理由だ。
ちなみに、泉美が資金提供をお願いしたナンパ社長や、泉美の元同僚だった大手ゲーム会社社員など、このドラマには性格が悪い男が多数登場する。ゲームの中のケント様の完璧さや、航の純粋さなどを引き立たせるための役どころだろうから、性悪の男たちを登場させること自体に異論はない。だが、その男たちの発言や嫌がらせ方法がどうにもステレオタイプで、クズ男の描き方も古いと感じた。
ゲームの推しキャラとリアル恋愛をリンクさせるというテーマは新しいのかもしれないが、物語や演出が古臭いのだ。今夜放送の第3話では、そういった時代遅れ感が少しでも薄らいでいることを願うばかりである。
●堺屋大地
恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『週刊女性PRIME』『日刊SPA!』などに寄稿中