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鈴木亮平『TOKYO MER』ご都合主義で奇跡を安売り…それでも圧倒的に面白い
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2021.08.01 11:00 最終更新日:2021.08.01 11:00
正直、ご都合主義全開なドラマは好きじゃない。こんなラッキーな展開ばかり続くなんてありえないだろ……といった気持ちが沸き起こり、冷めてしまって物語に没入できなくなるからだ。
日曜劇場『TOKYO MER~走る緊急救命室~』(TBS系)はご都合主義で奇跡のような展開ばかり起こる作品だ。しかし、ハマってしまう。グイグイ引き込まれてしまうのである。
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鈴木亮平主演の本作は、オペ室と最新医療機器を装備した専用大型車両ERカーとその救命救急チーム「TOKYO MER」が、重大な事故、災害、事件などの負傷者を救出していくドラマ。
視聴率は第1話14.1%、第2話14.3%、第3話14.4%と高水準で推移。先週放送の第4話は10.1%と数字を落としたが、裏番組が『東京五輪 サッカー男子 日本×メキシコ』(テレビ朝日系)、『東京五輪 卓球 混合ダブルス準決勝』(NHK Eテレ)だったことを考えれば、二桁をキープしただけでも大健闘と言えるだろう。
(※視聴率はビデオリサーチ調べ/世帯平均視聴率/関東地区)
■冷めてしまう気持ちを感動が余裕で上回る
「TOKYO MER」のメンバーはチーフドクターの喜多見幸太(鈴木)を筆頭にした7人で、彼らが駆け付けた現場では死者を1人も出さないことが “使命” とされている。
普通に考えて、その “使命” が必ず果たされる保証はない。というか、チームメンバーがいかに有能なスタッフ揃いでも、彼らは神様でもスーパーヒーローでもないのだから、到着したときにはもう不可抗力な絶望的現場だってありえるはず。
実際、第1話のトラック・バス衝突事故や工場爆発事故も、第2話の夏祭り爆発事故も、第3話の少女人質立てこもり事件も、第4話のトンネル崩落事故も、どれもこれもベリーハードな大惨事ばかり。死者が出てしまってもなんら不思議はないレベルに思える。
だが、第4話までで「TOKYO MER」が出動した現場は、すべて死者ゼロなのだ。
しかも、事故や事件に巻き込まれた一般人の命が危険なのはもちろんなのだが、現場はまだ爆発や崩落といった危険性があり、救助活動をおこなう「TOKYO MER」メンバーやレスキュー隊の面々も二次被害のリスクで死と隣り合わせという状況。
現に、自分の命をかえりみず現場に飛び込んでいく喜多見は、死んでいてもおかしくないシチュエーションをすでに何度も経験している。
それでも、死者ゼロ。すべての命を救っている。ラッキーが起こりすぎ、奇跡が起こりすぎなのだ。
特に第4話は2つの奇跡が同時に起こっていた。
トンネルの天井板が崩落して多くの人が巻き込まれるが、そのなかには少女への移植手術用の心臓を運搬中だった医師・小山希望(高橋ユウ)も……。その心臓移植手術を担当するのが喜多見の元妻である循環器外科医・高輪千晶(仲里依紗)。
小山は喜多見らの決死の緊急オペにもかかかわらず、瀕死状態で一時は心停止。少女は心臓移植手術が終わるも、病院への運搬が遅れたためか心拍動かず。だが結論を言うと、小山はなんとか一命をとりとめ、少女は移植した心臓が動き出し、手術は成功した。
そんなご都合主義全開の展開に目をつむってしまいたくなるほど、「TOKYO MER」メンバーやレスキュー隊の熱さやプロフェッショナルな仕事ぶりに胸を打たれる。毎回毎回、危機管理対策室オペレーターの「死者は……ゼロです!」を聞いた瞬間、鳥肌が立つほどカタルシスを感じるのだ。
個人的に今回の第4話では、レスキュー隊の千住幹生(要潤)隊長の言動に目頭が熱くなった。千住は危険な現場にも強引に飛び込んでくる喜多見とたびたび対立してきた人物である。
そんな千住が、二次災害のリスクを考えトンネル内へ再び入ることを危機管理対策室室長から制止されると、「いま行かなかったら、俺は一生後悔します!」と説得。
そして、喜多見が「止めても無駄ですよ」とトンネル内に同行しようとすると、千住は「足を引っ張ったらぶっ飛ばす」と応じたのだ。言葉は乱暴だが、千住が喜多見を認めたこの言葉も胸アツだった。
一方、「TOKYO MER」の医師でありながら、裏では「TOKYO MER」を潰すよう特命を受けている音羽尚(賀来賢人)が、「高輪先生には俺から連絡する。急げ、必死に守った命を無駄にするな!」と、普段のクールさをかなぐり捨てて発したセリフも最高だ。
プロフェッショナルたちのスーパーリレーによって、2人の命が救われた第4話は、奇跡の安売りに少々冷める感情もあったが、それを圧倒的に上回る感動が去来した。
――今夜21時から放送される第5話もご都合主義全開かもしれない。それでも一見の価値ありだと思えるドラマなのだ。
●堺屋大地
恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『週刊女性PRIME』『日刊SPA!』などに寄稿中