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名曲散歩/研ナオコ『あばよ』中島みゆきとの「運命の出会い」は飛行機で
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2021.08.08 16:00 最終更新日:2021.08.08 16:00
東京・神田の古いビルの2階。そこには夜な夜な紳士淑女が集まり、うんちくを披露しあう歌謡曲バーがあるという。今宵も有線から、あの名曲が流れてきた。
お客さん:お、このイントロは研ナオコの『あばよ』。コメディエンヌではない歌手としての真骨頂!
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マスター:1976年リリース、研ナオコの12枚目のシングル。作詞作曲はご存じ、中島みゆき。
お客さん:中島みゆきとのつながりは?
マスター:飛行機の機内音楽サービスって知ってるよね。
お客さん:イヤホンで聞くやつね。
マスター:研ナオコはそこで初めて『アザミ嬢のララバイ』を聴き、衝撃を受けたという。さっそく事務所を通して中島みゆきに曲作りを依頼した。
お客さん:『アザミ嬢のララバイ』といえば中島みゆきのデビュー曲。まだ世間にそれほど名前が知られる前だね。
マスター:そう、そして出来上がったのが『あばよ』と『LA-LA-LA』だった。
お客さん:2曲同時にできたの?
マスター:いや、『あばよ』が先にできていたという。実はその前年にリリースした『愚図』がデビュー5年目にしてヒット。
お客さん:『愚図』は阿木燿子・宇崎竜童のコンビだよね。
マスター:暗い曲調が続くことを避けた事務所側が、間に『LA-LA-LA』をはさみ、満を持して『あばよ』をリリースした。
お客さん:その作戦がみごと功を奏したんだね。研ナオコはその後も中島みゆき作品を数多く歌っているよね。
マスター:『かもめはかもめ』『みにくいあひるの子』『ひとりぽっちで躍らせて』『ふられた気分』などなど。
お客さん:中島みゆきの曲調と研ナオコを声はめちゃくちゃ合っているよね。
マスター:数年前、あるテレビ番組で中島みゆきから研ナオコにあてた手紙が読まれた。「貴女が歌ってくださるのを聴くと、もともと、貴女がシンガーソングライターで、生まれた作品だったように聴こえてくる。(中略)この場合、私の役目は貴女の筆記用具だったのかもしれない」
お客さん:貴女の筆記用具……鳥肌が立つよ。お互いに認め合っているからこその表現だよね。
おっ、次の曲は……。
文/安野智彦
『グッド!モーニング』(テレビ朝日系)などを担当する放送作家。神田で「80年代酒場 部室」を開業中
参考:『朝日新聞』(2016年9月10日)/BSテレ東『あの年この歌 時代が刻んだ名曲たち』(2018年2月13日)