“ゴジラ” といえば、松井秀喜。 “燃える闘魂” といえば、アントニオ猪木。そして、 “美人演歌歌手” といえば、この人――伍代夏子(59)だ。
でも、しかし。見た目と素顔は大違い。伍代は正真正銘の “頑固者” 。レコーディングでも、納得するまで20回でも30回でも歌い続ける。彼女の辞書に「まぁ、いいか」という言葉は存在しない。
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「SNSで公開しているのでヒソカに……ではないですけど、趣味の写真も同じです。たとえば鳥……大きく鮮明に撮りたいから、限界ぎりぎりまで近づいて、あとはジッと待つ。自分が木や風になった気持ちで、1時間でも2時間でも、自分が撮りたいと思う瞬間が来るまで待ち続けます」
ひょっとして、伍代は待つ人!? とんでもない。待つときは何時間でも待つが、一度、撮りたい! と思ったときの行動力は群を抜いている。
「冬の北海道でしか撮れないオジロワシと、同じく北海道に170羽ほどしかいないシマフクロウを撮るために流氷ツアーを企画。自分で車と船をチャーターし、ガイドさんを探して……途中、船酔いで吐きそうになりながら(苦笑)、それでも夢中でシャッターを切っていました」
このツアーで撮った枚数は、オジロワシとシマフクロウだけで3000枚。そのほかを加えると、2日で7000枚を超える。
「それだけ撮っても、残しておきたいと思うのは10枚くらい。時間がたってもう一度見直して、これもいいなぁと思えるのは3、4枚ですね」
これは、ホームにしている東京の代々木公園と新宿御苑でも同じだ。
「気配を殺して近づけるだけ近づいて。ファインダーを覗いていると、鳥のほうが “うるさいなぁ” という顔でこっちを向く瞬間があるんです。そこで一気に、バババババッ……と連写して。こっちは撮ったもんねぇ〜という気持ちですよ。ところが――」
ところが?
「家に帰って見ると、見事に全部ピンボケしてるんです。もう、くそ〜〜ッ! ですよ。でも、どんなに腹が立っても、あの瞬間はあのとき一度だけのもの。次に撮れたとしても、もうあのときのものじゃない。だからよけいに、その瞬間を大切にしたいんです」
なんという執念。なんという潔さ……。
「それって、褒めてます?」
まっすぐな強い視線で見つめられると、ドギマギしてしまうが……もちろん、最上級の褒め言葉です。