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上島竜兵60歳で振り返る「ダチョウ倶楽部」ギャグ誕生ヒストリー『アメトーーク!』が鍵だった
8月19日に『アメトーーク!』(テレビ朝日)で『上島竜兵 祝・還暦SP』回が放送されました。上島さんはオープニングで「上島竜兵60歳。これと言って代表作なし」と自虐的に挨拶していましたが、決してそんなことはありません。
その証拠に、この放送で誰もが知る数々の代表作のギャグを披露していました。そのギャグの誕生秘話を、筆者が以前ダチョウ倶楽部さん(上島竜兵・寺門ジモン・肥後克広)を取材したときにお聞きしました。
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まずは、いまやダチョウ倶楽部さんの代名詞といえる「熱湯風呂」。
上島「もともとは『スーパーJOCKEY』(日本テレビ)内の『熱湯コマーシャル』のコーナーで(たけし)軍団さんがやってたんです」
寺門「でも軍団さんは『押すなよ押すよ』とは言ってないんです。軍団さんは、ただ押すだけだったから。『押すなよ』は『スーパーJOCKEY』が終わって俺たちが熱湯風呂を始めるときに、ネタっぽくしたのが始まりです」
肥後「確かにあのパターンを作ったのは僕らですね」
その熱湯風呂でのお約束『押すなよ。押すなよ。絶対に押すなよ』を完全にシステム化したのは『アメトーーク!』に出演した際だと言います。
上島「僕たちがいったん『熱湯風呂』をやって、その後にVTRを見ながらリーダー(肥後)が解説するっていうのをやったの。VTR内で俺が『押すなよ。押すなよ』と言ってたら」
ジモン「リーダーが『ここはまだです』と説明して」
上島「俺が『絶対に押すなよ』と言ったら」
ジモン「『これ、押せってことですね』とリーダーが解説したんです」
上島さんが「ドン!」と足踏みしたら、周りのみんながジャンプするというギャグ。これも『アメトーーク!』が関係していました。
上島「リハーサルで僕が『熱湯風呂』から上がって来たときに、『なんで押したんだよ!』と怒りながら、最初は足じゃなく、お風呂のヘリを手でたたいて。ジャンプもみんなじゃなく、俺1人で飛んでたの。そしたら加地(倫三)さん(『アメトーーク!』の演出兼プロデューサー)が『見えやすいように前に出て足でやりません?』って言ったのよ。それで一回足でやってみたら『こっちの方がいい』ってなって。ジャンプもみんなでやるようになったから『足の方が合わせやすい』ってなったのよ」
ジモン「ギャグって、僕らと演出家がうまくかみ合ったときに生まれるんですね」
上島「例えたら、僕が『こういう料理ですよ』って出したときに加地さんが『これをかけたらもっとおいしくなりますよ』みたいな感じだね」
『どうぞ、どうぞ、どうぞ』というギャグが誕生したのは『ナイナイナ』(テレビ朝日)という1997年から99年にかけて放送されていた番組からでした。
ジモン「最初は『どうぞ、どうぞ』とか言ってなかったのよ。逆バンジーを誰がやるか決めるときに、『俺やりたい』『俺やってもいいよ』って言ってたら、竜ちゃんが『そんなこと言ったら俺だってやるよ』って。そしたらみんなが『え! 竜ちゃんがやる? 竜ちゃんがやるんだったら仕方ないな、譲るよ』って感じで。それを3回ぐらい繰り返してたのよ」
上島「それで、次のロケではバンジージャンプをやることになったの。このときは上でスタンバイした状態で、俺が『怖くてやりたくない』って言ってたのよ。そしたら下からみんなが『俺がやる』って言うから。『じゃあ俺がやるよ』て言ったら、みんなが『どうぞ、どうぞ』って。ここで『どうぞ、どうぞ、どうぞ』が固まるわけ」
このギャグも、番組収録のなかで徐々に固まって完成したのです。実はこの『ナイナイナ』のディレクターをやっていたのも、前述した加地さんなんです。
ギャグが誕生した際の竜兵さんと加地さんの心温まる話もお聞きしました。
上島「その現場は何回も『どうぞ、どうぞ』をやってウケたんだけど、2時間ぐらい粘って結局、俺はバンジーを飛べなかったんだよ」
ジモン「普通、飛ばなくちゃダメですよ。我々はリアクション芸が売りなのに。しかも番組が用意したバンジーにはロケセット、バンジー用のクレーン、カメラなど何百万円もかかってるんです」
上島「だから降りて来て加地さんに『本当にすいませんでした』って僕が言ったら。加地さんが『いえいえ、どうぞどうぞが大爆笑だから全然大丈夫です』って」
ギャグは机上で考えたものより、番組上で演者やスタッフなど、みんなで固めていく方が代表作になるのかもしれません。
インタビューマン山下
1968年、香川県生まれ。1992年、世界のナベアツ(現・桂三度)とジャリズム結成、2011年に解散。同年、オモロー山下に改名し、ピン活動するも2017年に芸人を引退しライターに転身。しかし2021年に芸人に復帰し現在は芸人とライターの二足のわらじで活動している。