『ナイト・ドクター』キンプリ岸優太の「意味わかんねぇよ」連発にイライラ

 

　結論から言うと、この回の終盤ではイライラはおさまったが、序盤から中盤にかけてのKing ＆ Prince 岸優太が演じる役に、苛立たされることが多かった。

 

　先週月曜放送の『ナイト・ドクター』（フジテレビ系）第9話のことである。

 

　波瑠主演の医療ドラマで、「365日24時間、どんな患者も断らない」医療という崇高な目標を掲げ、立ち上げられた夜間専門の救命医チームを描いた群像劇。そのチームのメンバーで苦楽をともにするのは波瑠、田中圭、King ＆ Prince 岸優太、DISH// 北村匠海、岡崎紗絵の5人が演じる若手医師たちだ。

 

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　第9話は岸演じる深沢新と、その妹で重い病気を患っている高校生の深沢心美がフィーチャーされた。

 

　間もなく退院できるという時期に容体が急変した心美だったが、緊急手術でなんとか持ち直す。そんな彼女は万が一自分が死んでしまったときのことを考え、臓器提供ドナーの登録がしたいと深沢に同意を求めるが、深沢は「なに言ってんだよ、こんなの絶対認めないからな！」と大反対し……というストーリーだった。

 

■“価値観の多様性” を理解せず、思考を放棄

 

　心美が多くの人がドナーを待っていると伝えても、深沢はこう激昂する。

 

「知るかよそんなこと、どうでもいいよ！　だいたいドナーになるってどういうことなのかお前のほうこそわかってんのか。体にメスを入れられて、お前の代わりにほかの誰かが生きるために、なんでそんなことする必要があるんだよ。そんなつらいこと、なにもお前がする必要ないだろ！」

 

　北村演じる桜庭瞬が心美の気持ちを考えてほしいと諭そうとしても、

 

「あのカード（ドナーカード）に名前を書いたとたん、心美が、心美が死ぬのを待ってるやつらが大勢いるのかと思うとゾッとすんだよ！」

 

　と深沢は感情をあらわに。

 

　さて、筆者が深沢にイライラしたのは、医師である自分を棚に上げて、妹のことばかり考えているから……ではない。

 

　確かに、医師である彼がドナーを待つ人々を否定するような暴言を吐いたのはよろしくないと思うが、桜庭からそれでも医者なのかと問われた際に彼の口から出た「医者の前に心美の兄貴なんだよ！」という言葉は、身につまされるものがあった。

 

　医者の言い分としては正しくないのだろうが、兄の言い分として間違っているわけでもない。また、医者がドナーを否定してはいけないというのは正論だが、そもそも人間は常に正しくいられるわけでも常に強くいられるわけでもない。

 

　医師の立場より愛する妹の兄という立場を優先する考えを、誰も否定する権利はないように思う。

 

　ドナーになりたいという妹の主張は彼女の価値観においては正解なのだろうし、医師でありながら妹のドナー登録は反対という兄の主張は彼の価値観においては正解なのだろう。

 

　要するに正解と正解のぶつかり合いなのだ。

 

　では、筆者が深沢のどこに苛立ったのかというと、この一連のドナー登録問題で彼がたびたび発していた「意味わかんねぇよ」という発言にだった。

 

　妹の考えも兄の考えも正解。正解の種類が異なり対立しているだけで、どちらか一方が間違っているわけではない。

 

　こういった価値観の違いで衝突したときに必要なのは、まずは相手の言い分をしっかり受け止めること。対立する相手の価値観を理解したうえで、それでも反対するのであればいいと思う。

 

　しかし、深沢は妹の気持ちを考えようともせず、「意味わかんねぇよ」という雑な言葉で理解しようとする思考を放棄。最後まで反対してもいいが、せめて意味（気持ち・価値観）はわかってやれよ、と。

 

　深沢のような “価値観の多様性” がわかっていない人間を見ると、非常にイライラしてしまうのだ。

 

　その後、深沢は仲間の言葉に胸打たれ、きちんと心美と向き合って話をし、最終的にはドナー登録を認める。個人的には、妹の価値観を理解したうえで最後まで承諾しない結末もありだと思ったが、心美のためにはこれでよかったのだろう。

 

　この第9話の後半で深沢はきちんと “価値観の多様性” を理解できたようだし、もちろんドラマを盛り上げるための演出だったということもわかっている。

 

　が、やはり「意味わかんねぇよ」を連発していた前半の彼の無理解さには辟易としてしまい、気持ちよくは観られなかった。

 

――そんな『ナイト・ドクター』、第7話までの世帯平均視聴率は二桁台をキープしていたのだが、先々週放送の第8話は9.5％、先週放送の第9話は9.1％と一桁台に落ちてしまった。今夜放送の第10話でまた二桁台に戻せるだろうか……。
（※視聴率はビデオリサーチ調べ／関東地区）

 

●堺屋大地
恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『週刊女性PRIME』『日刊SPA！』などに寄稿中